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「戦友の影」500文字昭和時代後期小説

昭和後期の風景

1960年代後半、東京。
夏の終わり、陽射しが残る街角に、ひとりの中年男性が歩いていた。
名は佐藤浩一。
戦後の混乱を乗り越え、昭和の波に揺れながら生きてきた男だ。
東京オリンピックも過ぎ、経済は成長を続けていたが、浩一の心はどこか浮かない。

大学を出て、企業に勤め始めた頃は、未来に対する希望があった。
だが、年月が経つにつれて、日々の忙しさに追われ、理想を忘れた自分に気づくことが増えた。

その日、浩一はかつての戦友、久保田に偶然再会した。
戦時中、共に命を懸けて戦った仲間だ。
しかし、久保田の顔にはどこか疲れ切った表情が浮かんでいる。
「お前もだいぶ変わったな」と言いながら、久保田は浩一を見つめた。

久保田は、戦後の経済復興の中で「成功」を手に入れた。
しかし、その成功は心の中の空虚さと引き換えだった。
彼は長い沈黙の後、ぽつりと言った。
「お前は、あの頃のことを忘れたのか?」浩一は答えられなかった。
戦争の記憶は、今や遠い過去となり、日常に追われるあまり、過去の自分を見失っていた。

夕暮れ時、二人は駅前で別れた。
浩一は一人、無言で家路を急いだ。
昭和が過ぎ去ろうとしていたその時代に、彼の中ではまだ、あの戦争の影が色濃く残っていた。

彼の背中が小さくなっていく中、昭和という時代の終焉を感じていた。

「この作品は約500文字で作成されています。」

※文字数はおおよそ500文字程度であり、多少の誤差が含まれることがあります。物語の核心やメッセージが伝わることを重視しています。


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