エッセイ 山本五十六の人材育成論
以下の文章は私の個人的見解です。事実誤認や偏見は大目に見て下さい。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ
話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず
やっている 姿を感謝で 見守って 信頼せねば 人は実らず」
これは日本海軍元帥の山本五十六の言葉として伝えられている言葉で、人材育成の指針として、現代でも大事にされています。私も好きな言葉なのですが、これを私流に解釈すると、これは現代のコーチングそのものなんですね。傾聴の大切さ、褒めて育てること、いかにして相手の主体性を引き出すかをテーマにしています。山本五十六自身も、上杉鷹山の影響も受けているということなので、いろんな人の考えを取り入れてこの言葉にまとめたのではないかと思います。
山本五十六はO型です。それに対して当時の軍隊は、陸軍も海軍もA型です。天皇制を維持するために、外国から日本を守っていくこと、それが軍隊の存在意義の前提条件としてあったわけです。そのために軍隊でも徹底したA型教育が行われました。その第一は、秩序最優先、上官の命令への絶対的服従ではなかったでしょうか。しかし、そういう教育では、主体性のある人間は育ちません。秩序優先の事なかれ主義の人間ばかりになってしまいます。そのことを山本は危惧していたんだと思います。山本は明治の人間です。山本が育った頃は、欧米に追い付け追い越せの時代ですから、同じ軍隊でもO型思考の時代ではなかったか想像します。当時、海軍を支配していた「大艦巨砲主義」を否定して、飛行機の時代の到来を予測した山本の願望だったのでしょうが、時代はA型主流で流れていきます。軍人の官僚化、精神主義がまかり通ります。なんとかして部下を主体性のある人間に育てたいという思いがこの言葉に込められていたのだと思います。
山本のこの言葉が、いまだに死なずに残っているということは、現代でも、日本人の主体性のなさは変わっていないということなのでしょう。