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エッセイ 私流読書法~相手の立ち位置を知ってから読む~

 私は本を読むとき、特に評論を読む前には、必ずすることがある。それは、筆者の経歴を知ることだ。どういう傾向の考えの持ち主かを知るためだ。性格(血液型)は簡単にはわからないから、その人の経歴から、どういうことを勉強してきて、どういう仕事をしているのかをネットも使って調べる。これを先入観という人もいるだろう。しかし、そういう予備知識なしに無防備に読み出すと、特に読書にあまり慣れていない人が読むと、とんでもない方向に連れて行かれることがある。
 ある自己啓発書を読んだ時だ。書いてあることは至極御もっともなことなのだが、どこか宗教の匂いがした。本自体は、そういうことには触れていない。しかしネットで調べてみると、キリスト教のある宗派の熱心な信者であることがわかった。それを知ったことによって、何か筆者の悪意を感じたとか、その宗派がどうとか、言うのではない。ただ、書いた人がその宗派の信者であることを知った上でその本を読むか、知らずに読むかによって、受け取り方が変わって来るだろうと思うのである。少なくとも、宗教の熱心な信者であれば、「神」の存在を大前提として話をしてくるだろうから、読む方もそれなりの心構えをもって読まなければならない。右寄りの考えを持った人なのか、リベラルなのか、左翼思想の持主なのかによって、当然書く本の内容は変わって来る。公正中立にはなかなか書けないし、また、書く必要もなかろう。ただ、個人的には、書く人には、はっきりと自分の立ち位置をあきらかにしておいて欲しいと思う。しかし、それは書き手の義務ではないだろうから、読み手はしっかりと書き手の立ち位置、そして自分の立ち位置を見極めて、本を読むようにした方がいいと思う。それが本をよく理解することになるし、本に振り回されない方法だと思うからである。

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