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エッセイ ペンの向く先

以下の文章は、ペンの持つ力は権力に匹敵するものであり、その使い方を誤ってはいけないという趣旨のもとに書いた物であって、特定の個人や会社を攻撃するためのものではないことをご理解の上、お読みください。

 「ペンは剣よりも強し」という。武力や権力にはペン(言葉)の力で対抗できるというものであるが、ペンとは昔は新聞、ラジオが主流だったと思うが、今では週刊誌、テレビ、それにSNSも含めてもいいのではないかと思う。そういったメディアの後ろには、一人ひとりの力は小さいかもしれないが、数多くの読者、視聴者、支持者、ファンがいる。その力の集合体が大きな力を発するのであるが、どうかすると、メディア自身が力を持っているかのように錯覚されることがある。(そういうメディアのトップは「天皇」と呼ばれるらしい)企業の不祥事会見で、会社の経営陣が頭を下げているのは、読者や視聴者に対してであって、メディアに対してではない。メディアは読者や視聴者を代表しているだけであって、我こそは民主主義の番人である、などと思い上がってはいけない。
 ひとつひとつの小さなペンが力を持ち得るのは、そのペンの先が同じ方向を向いた時だ。その方向が不正な権力者に対してであればよいが、時として、とんでもない方向を向くことがある。特定の市民を攻撃することがあってはならない。
 日本人は基本的にデジタルが苦手だと思う(私も含めて)。苦手であるがゆえに、少数のインフルエンサーの影響を受けすぎているのではないか。同調傾向が強すぎるように感じる。ペンでも、たとえひとつの小さなペンでも、その鋭いペン先で突けば、人を傷つけることができることをよく認識しておかなくてはならない。
 人気芸能人のN氏が社会的制裁を受けて突然の引退に追い込まれた。違約金とか、失った未来の収入とかを考えると、かなりの金額になると思う。自ら決断したこととはいえ、制裁としてはあまりに大きすぎるのではないかという気もする。彼にも、落ち度なり、思い上がりなり、不手際はあったと思うが、芸能人生命を奪われるほどのことであったのか。
 最初に報道をした出版社B社にも、関連を疑われるテレビ局F社にも同じことは言える。己こそ正義だと思い上がっていないか、己の利益のことばかり考えて、後ろにいる、読者、視聴者、ファンのことをないがしろにしていないか。彼らをミスリーディングしていないか。それはSNSにも言えることである。
 天皇だ、インフルエンサーだとちやほやされていい気になっていると、いつか、自分にペン先が向けられる時が来る。会社という組織の後ろには、社員という多くの人間がいることも忘れてはならない。

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