"旅"と幸せについて。(続・旅と旅行の違いに関する一考察)
僕は大学時代、心理学を学んでいた。
「え、じゃあ心読めるの?」なんてたまに言われるが、「ンなこと出来たら苦労しねえよ」というのを学ぶのが心理学のイロハのイであり、その「苦労しねえよ」に挑んだ先人達の苦労の歴史を学ぶのが、イロハのロだったりする。
僕の専攻は、その歴史の中でも比較的新しい「ポジティブ・サイコロジー」「ポジティブ心理学」と呼ばれる分野だ。
すごーく端折って解説すると、心理学というのは「病んで」しまった人をどう治療するか、というところがスタートであり、マイナスをニュートラルに戻すことが当初の目的だった。
医療・健康領域で「予防」の重要性が注目されはじめた20世紀後半から21世紀初頭。
心理学にも、ニュートラルをいかにプラスの状態にするか―負の面だけでなく「良い」面に着目した分野が必要ではないか、と提唱されたのがこのポジティブ・サイコロジーという学問である。
その扱うテーマとしては、人は何をもって幸せや喜びを感じるか、人間の持つ強みに関してなど多岐にわたり、近年では経営や教育の分野でも注目されている。
その中でも「幸せ」に関する研究が、前回で書いた「旅と旅行の違い」とリンクしていることに気づいたのが、このエントリーのきっかけだ。
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僕が「旅と旅行の違い」について考えたのは2つ。
・自分で決める
・「今、ここの感覚」を大切にする
まず、「自分で決める」という点。
幸福度と相関のある要因として、「自己決定」は所得や学歴よりも影響が大きいという研究がある。
これについてはぴったりのnoteがあったので引用させて頂きます。
次に、「今、ここの感覚」について。
これは、ポジティブ・サイコロジーの中に登場する「フロー」と呼ばれる心理状態の特徴である。
フローとは、「今ここで起こっていることに集中し、自分が感じている感情や思考を判断せずに冷静に観察している心の状態」のことを指す。
スポーツで言うところの「ゾーン」といえば、馴染みがあるかもしれない。
こんな風に、「時間も我も忘れて没頭できるような経験」が、幸福度に大きな関わりがあると言われている。
また、近年注目されているマインドフルネスや瞑想でも「今、ここの感覚に意識を集中する」というのが重要なエッセンスだ。
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昔取った杵柄で、やや堅苦しい文面になってしまったかもしれないがご容赦頂きたい。
要するに何が言いたいかというと、「"旅"するように生きられたら、人って幸せなんじゃね?」というのが僕の仮説である。
当然、一概には言えないのはわかっている。
「決める」ということは「責任を持つ」ということでもあるし、多かれ少なかれそれはプレッシャーやストレスになる。
先行きが見えないのは不安だし、今まで積み重ねてきたものを守ることも、きちんとした将来設計も、もちろん大事。
ありきたりな言葉だが、幸せの定義なんて人それぞれだ。
でも、もしよかったら試してみてほしい。
「世界一周に出ろ」とは言わない、「一人旅に行け」とも言わないから
日々の暮らしの中で、「今、ここの感覚を大切に」「自分で決める」瞬間をつくり、小さく"旅"してみたら。
そして、そんな些細なことに喜びを感じられたら、それがもう「幸せ」ってことなんじゃないかとも思う。
見つからなかった探し物はポケットに入ってました。と
幸せなんかおそらくそんな感じでしょ!?って
君の声は教えてくれる
―Mr.Children 『ひびき』
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改めて、前回のエントリーはこちら。良かったら読んでみてください。