中間対応って何?
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「中間対応って何?」について説明します。
特許出願、意匠登録出願、商標登録出願をされると「中間対応」という言葉を聞かれることと思います。
この中間対応とは何なのか、それを今回は説明します。
特許の場合は出願後に出願審査請求をしてから、意匠と商標の場合は出願後に自動的に特許庁の審査官による審査がなされます。
もっとも、手続をして直ぐに審査という訳でなく、審査待ち期間を経てから審査に着手されます。
その審査で、このままでは特許査定又は登録査定にできませんよという拒絶理由が発見されるときがあります。
その場合、審査官から出願人又は代理人に拒絶理由通知がなされます。
中間対応とは、この拒絶理由通知に応答する手続のことです。
そして、中間対応で提出する書類は、主に手続補正書と意見書になります。
場合によっては、証拠書類なんかも提出します。
もっとも、各法域で提出する書類というか内容が異なります。
特許は手続補正書と意見書の両方を提出することが多いのですが、意匠は意見書のみの場合が多く、商標は意見書のみ提出することと手続補正書と意見書の両方を提出することが半々くらいです。
あと、特許は拒絶理由通知が来ることが殆どですが、意匠と商標はそこまで多くありません。
理由は、特許の場合は出願時に権利範囲を広めに記載することが多いからです。
これは、特許では少しでも権利範囲を広くして取得する方が、お客さんにとって後々有利になってくるためです。
ですので、拒絶理由通知が来たからダメという訳ではないのです。
また、意匠や商標でも拒絶理由通知が来て、それに反論する余地があることがけっこうあります。
では、これらの手続補正書や意見書にはどういったことを記載するのでしょうか。
特許で審査官に反論する場合、手続補正書には、補正した「特許請求の範囲」や「明細書」の内容を記載します。
この補正ですが、審査官から出された拒絶理由を解消するように記載していきます。
一般的には、請求項への構成要件の付加や、一部の請求項の削除といった補正が多いと思います。
注意点として、出願当初の明細書等に記載した範囲でしか補正ができないということです。
出願当初の記載を超えて補正すると、新規事項の追加になってしまいます。
よく言われる例として、請求項に「弾性体」との記載があって、明細書に弾性体の実施例として「コイルばね」だけが記載されている。この場合、請求項の「弾性体」を「コイルばね」に補正することはできても、「ゴム」には補正できないということです。
あと、禁反言にも注意が必要です。
禁反言とは、意見書などで主張したことと異なることを、後で主張できないということです。
例えば、本願意匠が5段の段差があるブーツであって、審査で3段の段差のあるブーツを引例(過去の似た意匠が記載された文献)として拒絶理由通知がなされたとします。
そこで、5段と3段とは見た目が全く違うから非類似であるという意見書を提出して登録査定になったとします。
この場合、後で他人が3段のブーツを作っても、その3段のブーツが自らの意匠権を侵害しているとは言えなくなります。
そして意見書には特許の場合、拒絶理由の内容、補正後の本願発明、補正の根拠、引例(過去の似た発明が記載された文献)との対比、まとめと言った具合に記載していきます。
心の中では審査官に「こいつめ、オレが書いた書類にケチ付けやがって、ええ加減にしろこのボケ!」なんて思いながら書くこともありますが(笑)、言葉遣いは丁寧に記載します。
あと、判断が微妙な場合は、審査官面接といって審査官に面接を申し込むことがあります。
この面接をするか否かで特許査定率も多少変わってくるように思います。
以前は、面接は東京の特許庁まで出かけてすることが多かったのですが、今は新型ウイルスの関係から、インターネットによるテレビ会議で行なうようになっています。
少し前に、私もテレビ会議方式で面接をしてもらったのですが、何だか細かなニュアンスが感じられずに違和感がありました。
面接で現物を審査官に見せて納得してもらうとか、食品なら試食してもらうという手もあったのですが、今はそういった手段が使いにくくなっていますね。
意匠の場合は、手続補正書は願書の記載事項についての補正くらいしかありません。
図面を補正すると、殆どが要旨変更とみなされて、補正却下となるからです。
意見書は、特許とは書き方が異なりますが、本願意匠の態様と引例となる意匠の態様とを記載し、引例となる意匠との相違点を述べて、登録査定となるべきだという主張をします。
商標の場合は、手続補正書は指定商品の一部削除又は減縮が主なところになります。
こちらも商標自体を補正すると、殆どが要旨変更とみなされて、補正却下となってしまいます。
意見書は、本願商標の態様と引例商標との態様とを記載して、引例となる商標との相違点を述べて、非類似であるとの主張をしたりします。もっとも、商標の場合、他人の商標と似ていると言う拒絶理由だけでなく、自他商品識別力がないといった拒絶理由もあります。その場合は、意見書の内容が変わってきます。
これらが一般的な中間対応と呼ばれるものです。
中には、拒絶査定がなされた後に、さらに拒絶査定不服審判を請求することもあります。
中小企業ではあまりありませんが、上記の審判でも納得できなければ知財高裁に提訴、さらに最高裁に上告といったこともあり得ます。
これらの中間対応の結果、特許査定又は登録査定となるものもありますし、残念ながら拒絶査定となるものもあります。
いかがでしょうか、中間対応について多少なりともご理解いただけたでしょうか。
これらの記事が、御社のご発展の参考になれば幸いです。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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