商標に関する料金のヒミツ その2
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「商標に関する費用のヒミツ その2」について説明します。
前回(https://note.com/norio_sakaoka/n/naf02f71c5604)は、商標の費用に関して、「1.先行商標調査」と「2.出願時の費用」について説明しました。
今回は、「3.拒絶理由通知がなされたときの中間対応費用」「4.登録時の費用」「5.10年後の更新登録の費用」について説明します。
最後には、坂岡が予想する今後の商標に関する料金についても述べます。
3.拒絶理由通知がなされたときの中間対応費用
拒絶理由通知というのは、審査官からこの商標は登録することができない理由がありますよという知らせです。
この理由には色々ありますが、もっとも多いのが他人の先行商標と似ているという理由と、その商品の品質等を表わしているなどして他人との識別力がないという理由です。
勘違いしてはいけないのが、拒絶理由通知はあくまでも「理由」を通知しているに過ぎません。
つまり、登録にならないという「理由」を解消してやれば登録になるのです。
この理由を解消するのに意見書や手続補正書を提出します。
これらの意見書や手続補正書を作成して提出する作業を中間対応といいます。
この中間対応ですが、一般的に10万円くらいの費用がかかります。
何故か?それは審査官の判断を覆すだけの客観的な主張や証拠が必要になるからです。
そして、それだけの主張や証拠を用意するのに相応の手間がかかるからです。
格安事務所なんかでは、意見書の費用も無料とか格安にしているところがあるようです。
しかし、きちんと対応しようとするならば、無料とか格安にできるほどの工数に収まりません。
例えば、拒絶理由通知のうちよくあるパターンだと、意見書の型もある程度は決まってくることもあるのですが、それでも登録の可能性を上げるためには個別の事情についても検討する必要があります。
するとけっこうな手間がかかってきますので、弊所ではそれなりの費用をいただいております。
もっとも、中間対応にも難易度がありまして、指定商品を一部削除するだけで済むような簡単な場合もあります。
そんなときは安価に対応しております。
要は、どれだけの手間がかかるかということですね。
4.登録時の費用
これは、事務所の費用と印紙代に分かれます。
事務所の費用としては、一般的に成功報酬として4万円前後、登録費用として1万円程度が発生することが多いようです。
また、印紙代も10年分で28,200円必要になってきます。
これを高いとみるか安いとみるかは、人それぞれなので何ともいえません。
弊所の場合は登録時に弊所費用と10年分の印紙代を一括納付することが殆どです。
面白いなと思うのは、格安事務所の場合は、費用を5年分の分割納付での印紙代で計算していることです。
印紙代は10年一括で納めると28200円なのですが、5年の分割納付にすると16400円×2=32800円(10年分)になります。
さらに、5年後に分割納付の事務所手数料がまた発生しますので、お客さんにとっては印紙代と事務所費用の双方が割高になるんですね。
でも事務所にとっては5年後にさらに手数料が入るので良いことなんです。
格安事務所はここで多少なりとも利益を上げているのかなと思ってしまいます。
さらにいうと、5年後の分割納付のお知らせをすることで、事務所の存在をアピールというか宣伝することもできます。
商売上手だなと思います(真面目に褒めています)。
5.10年後の更新登録の費用
商標の存続期間は登録から10年です。
存続期間が満了するタイミングで(正確には言葉が違いますが、簡単にするためにこのように表現します。)、更新登録をすることで存続期間を10年延長することができます。
そして、更新登録を繰り返すことで半永久的に商標を存続させることができます。
この更新登録の費用ですが、ここでも事務所費用と印紙代に分かれます。
事務所の費用としては3~4万円くらいが多いと思います。
印紙代は10年一括で38800円です。
ここでも5年の分割納付ができますが、5年分が22600円となって、10年で45200円となり、さらに5年後に事務所手数料が発生するので割高になります。
実は、この更新登録の手続は一般的にはそんなに手間はかかりません。
では、どうして3~4万円も事務手数料がかかるのか?
これは、過去10年間ファイルを保管してきた手間賃です。
特許事務所では、義務ではありませんし稀に何らかの理由でできないこともありますが、基本的には10年後に商標の存続をどうしますかとお客さんに尋ねます。
放置してしまうと、更新できなくなってお客さんにとって不利益になるばかりでなく、事務所の信用がなくなるからです。
すると、半ば義務のように、登録から10年間ファイルを保管しておく必要があります。
この保管料だと私は考えております。
しかも、この保管料は更新登録のときにしかもらえませんので後払いです。
お客さんが更新しないといわれれば、それまでの保管料はもらえません。
全て電子データにすれば良いのではと思われるかも知れませんが、何かあったときのために紙の媒体で残しておくことは必要だと考えます。それに電子データであっても、データの保全は必要です。
弁理士目線で申し訳ないのですが、こう考えると、更新登録の費用もそれなりだなということが分かっていただけるのではないでしょうか。
6.坂岡が予想する今後の商標に関する料金
今後の商標に関する料金は、高い事務所と安い事務所とに二極化するとともに、その中間に一部の事務所が存在するようになると思います。
商標に関する専門的な知識(ここでいう専門的な知識とは、私たち弁理士から見ても高度な知識をいいます。)を持って難題をこなせる弁理士は、上述した費用よりも高い報酬を維持していくでしょうし、今以上に値上がりしていくと思います。
一方、弁理士として一般的な知識(これでも一般の人からみると専門的な知識ですが)のところは、格安にしていかないと仕事が来なくなるかも知れません。
但し、格安事務所として運営していくには、実務の殆どを補助者にやってもらって、弁理士は最終確認とかの一部の業務のみをしていかないと経営がなりたたないと思います。
また、お客さんから依頼されたときのやり取りも、数回の簡潔に終わらせる電子メールで行なわないと、業務が進みません。
弁理士が面談するときは別料金にしないと経営的に厳しいでしょうから、いかに面談せずに業務を進めていくかという仕組みも必要です。
こういう問題を解決できるところだけが格安事務所として生き残れると思います。
弊所みたいな特許も意匠も商標もするような地方の事務所は、お客さんに対して丁寧に応対することで生き残っていくしかないでしょう。
つまり、商標や指定商品に関して面談をきちんとして、又は面談しなくとも電話や電子メールできちんと説明して、弁理士が親身になって教えてくれるような事務所を好むお客さん向けに運営していくということです。
そして、料金的には中間層で存在していくと思います。
いかがでしょうか?商標に関する料金についてご理解いただけたでしょうか。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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