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漆の実のみのる国(藤沢 周平)
先に読んだ内村鑑三氏の「代表的日本人」で紹介されていた一人に「上杉鷹山(1751~1822)」がいます。
その人となりについてほとんど知らなかったので手に取った本です。
最近はめっきり「歴史小説」は読まなくなったのですが、最近いくつかの映画(たそがれ清兵衛・蝉しぐれ)で脚光を浴びている藤沢周平氏の作品であることも、この本を手にした理由のひとつでした。
物語は、藩主(後に隠居)上杉治憲(鷹山)とその家臣、竹俣当綱・莅戸善政らを中心人物として、彼らが米沢藩建て直しに力を尽くす姿を綴ったものです。
ストーリーとしては、米沢藩の再建がなったところまで描いたものでなく、なんとなくはっきりしないエンディングです。余韻を持った風情といえるのかもしれません。(このあたりは、それぞれ各人の好みですね)
また、この本に登場する鷹山は(傑出した君主ではあるますが、)「完璧無比の聖人君主」とまでは美化されていません。
ただ、1785年(天明5)35歳で家督を治広に譲った際、君主の心得として与えた「伝国の辞」は彼の抜きん出た理念を顕しています。封建時代真っ只中の頃を思うと、その基本思想は極めて先進的な(当時としては極めて特異な)ものでした。この辞だけでも、「名君」との評価は首肯されるものだと思います。
伝国の辞
一、国家は先祖より子孫へ伝え候国家にして我私すべき物にはこれ無く候
一、人民は国家に属したる人民にして我私すべき物にはこれ無く候
一、国家人民の為め立てたる君にして君の為めに立ちたる国家人民にはこれ無く候
右三条御遺念有るまじく候事
そして、
「なせばなる、なさねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
という有名な歌。
これも、壊滅的な財政状況の米沢藩にあって、長期的展望に基づき決して諦めず、粘り強く民のために精力を尽くした鷹山であるが故の重みある歌だと思いました。