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朝、会社に行きたくなる技術 (梅森 浩一)

 会社で問題になっているメンタルヘルスワークライフバランスを考えるために読んでみた1冊です。

 今までの私は、この本が想定している読者の「客体」になっていたわけです。もちろん、(今でも)主体になる可能性もあります。
 本書は、いわゆる会社でのストレス状況について、多くの実例とその対処方法を列挙した内容です。

 「オフィスの症例」で登場する人物は、だいたい20~30歳代の若手から中堅といった年代です。目次の中からいくつかご紹介すると、こんな感じのテーマが並んでいます。

仕事量が多すぎて私生活がボロボロ
「朝令暮改型」上司とのおつき合い作法って?
なにをやるにつけ自信がもてない
同時に仕事をすすめられない
失敗すると、いつまでも引きずってしまう
「未来」は変えられると知ろう
プレッシャーにホントに弱い......
理由はないけど、やる気が出ない

 ただ、正直な印象としては、書かれている状況の設定は表層的ですね。対処法についても感覚的なコメントレベルのものが多くて、今ひとつ十分な納得感は得られませんでした。
 しかし、こういう現実もある、そして、こういう対処で好転することもあるというヒントだと考えると、それなりに意味があります。

 たとえば、「仕事は細かく分けて、人への依頼分と自分の対処分とに振り分ける」とか、(スキル的に)「できない仕事」と、(気持ち的に)「嫌な仕事」とを峻別して対応を考えるといった「要領」は、些細なことで悩んでいる人への気づきになるかもしれません。

 具体的には、こんなアドバイスも書かれていました。「なにをやるにつけ自信がもてない」の章においてです。

(p62より引用) いきなりポジティブになれといっても、これまた難しいでしょうから、簡単にできる「ポジティブレッスン」をご紹介しましょう。
「自分の好みでメニューを選ぶ」、ただそれだけ。・・・
 自信とは、自分を大切に思い、それを主張することでもあります。

 本書のプロローグには、この種の本でよく引かれる「コップ半分の水の感じ方」が紹介されています。例の「もう、半分しか残っていない・・・」と思うか、「まだ、半分もある!」と思うかというものごとに対する感じ方・考え方の対比の話です。
 また、エピローグでは、こういうまとめをしています。

(p172より引用) なにもやる気がしない朝の日には、どうか思い出してください。ちょっとした心のもちようひとつで、あなたの人生は大きく変わるのです。

 現在、多くの企業で増加しているメンタルヘルスの問題のかなりのものは、いわゆる「要領」とか「心の持ちよう」とかで対処できるレベルを越えている、もしくは、そういうものとは異質の原因によるものです。
 具体的な行動の工夫や気の持ちようを否定するものではありませんが、その他の要因を掘り下げてひとつひとつ真剣に対応する必要があります。

 「最大の職場環境は上司」ですから、この課題解決において「上司」の責任は極めて重大です。


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