ある晴れた日に
その夜私は心地良さに誘われ近くの公園をぶらついた。
二十歳になったばかりだった。
奥まった先のベンチには品の良い老人がひとり。
横に立つ街灯の光に暗闇からほんのり浮かんでいる。
よく見ると少し古めかしい衣服を着ている。
私は引かれるように見ず知らずの老人の横に座った。
老人は「ある晴れた日に」と自分を語り始めた。
不思議なことに老人の話が脳内に映画のように広がる。
生誕に始まり幼少時から成長していき青年、壮年と。
老人の喜び、怒り、哀しみ、楽しみなどが私自身に感じる。
そして老人が墓石の下で静かに眠る姿が。
それは鮮明に脳内を覆うと霧のように徐々に薄れていく。
もう一度老人は「ある晴れた日に」と呟いた。
ビクッとして横を向くと老人はいない。
街灯は私だけを暗闇に浮かべている。
公園の大時計はベンチに腰かけた時間のままだ、
風に靡くのは何処かで見たような老人の一枚の写真だった。
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