野良のさよなら
野良が挨拶しているよ
疲れた毛を励まして
露出した皮膚を隠し
道の真ん中を
人々の営みの中を
堂々と
野生の威厳を振り撒き
声ひとつたてず
冷たい日差しを歩いているよ
こそこそと視線を伺い
自転車の陰や薄汚れた溝を
こそこそと
速足だった野良が
今日は歩いているよ
お世話になりました
長い間有難う
野良が挨拶しているよ
大地を強く踏んでいる
十字路を右に消えていく
精一杯振る立てた尻尾
さようなら
さようなら
野良が挨拶しているよ
もう僕は前が見えなかったよ
(オリジナル版)
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