大喧嘩
あれは四年前
母と忌まわしい従姉のことで大喧嘩
あいつは遠く離れた母のことを持ち出して
投げつけて
するっと逃げてゆく
車検切れの車に乗って
隣の県の山ん中
死のうと思ったらしいが
その気はない
もう何十年も前から病んでいる
母は娘のわたしにあいつのことを丸投げにする
仕方がないとやれることだけやったけれど
本音はもう関わりたくない
「あんたは冷たい」と母にはなじられる
冷たいと言われても、わたしにも感情がある
若い頃からこの従姉は母に迷惑をかけ通し
その上逆恨み
とっても性格の悪い奴
一筋縄ではいかない奴
母のやさしさを利用するだけ
狡賢い
わたしはそれを母の側で見つめてた
何十年も
母には従姉は姪っ子と言うよりももっと近い存在だ
母がまだ高校生の時に従姉は産まれる
それから母が父と結婚して家を出るまで従姉と一緒に暮らしていた
彼女の親よりも親の役目に果たしていたと私は思う
従姉は病んでいる
サタンが天使がやって来る
話しかけると言うのである
気持ち悪い
関わりたくない
でも母は放っておかない
なにくれとやろうとする
遠いのに
わたしと母はそのことで大喧嘩
母は自分の意志を曲げない
おやさまからは
「母の心は広くて、優しい心、あんたがそれを見守りなさい」と言われる
母はそれ見たことか、わたしは間違ってはいない、おやさまにも言われいる
錦の御旗を掲げてくる
それでも従姉に対しての母とわたしの亀裂は入ったまま
何か言うと、わたしは間違っていないと主張する
このことが無かったら母の身体の異常にももう少し早く気づけたかもしれない
しかも従姉は「わたしが関わると人はみんな死んで行く」と気味の悪いことを言う
今でもわたしは思う、あいつが関わったから母は死んでいったのか
あいつさえ、関わらなければもう少し生きていてくれたのか
母とわたしは近すぎた
だから言いたいことを言い、傷つけ合った
母は死ぬまでフンという顔をして
従姉とのつながりを持っていた
たとえおやさまの悪口を言われても相手にしないでいた
母は強い人
私は、従姉が嫌いです
人の邪魔ばかりをしてくるから
人の心を平気で傷つけるから
病んでいるから仕方のないことなのだろうか
「お母さん死んじゃうよ」
わたしがしばらく自分の足の手術で母を放っておいた時
わざわざ電話を寄越す
さみしい母の気持ちを伝えたかったのか
でもそれは今でもわたしの心に傷を残す
母が彼の世に旅立った
その時に知らせると
電話の向こうでワンワン泣いた
子供のように
わたしは泣くことも出来ずに途方に暮れていた
それからしばらくして
従姉とは連絡が途絶える
病んでいる人とは付き合えない
わたしは冷たいのか
母のように強くはない
この人と付き合うとわたしの方がおかしくなる
それでなくてもわたしは母のいないのを受け入れられない
ただ息をしているだけ
向こうから離れて行ってくれて
ありがとう
母も言っていた
「わたしが死んだらあの子とは縁が切れるでしょう」
冷たいわたしと恐ろしい従姉
どちらが人間らしいのか
どっちもどっち
なのだろうか…
分からない
今わたしの中の母は笑っている
「やっぱりね」って
いつの間にか大喧嘩は終わっている
わたしに残ったのは後悔だけ
母は旅立って行ったから