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タガログ語 (フィリピン語) の辞書はどれを使ったらいい?

語学においてよい辞書を使うのは重要なことです。

とはいえ、英語のような大きな言語ならいざ知らず、タガログ語 (フィリピン語) のような言語となると、よい辞書を見つけることはなかなか大変です。

そこで、この記事では、タガログ語 (フィリピン語) を学習する際に役立つ辞書をいくつかご紹介したいと思います。


語学学習によい辞書は必須

この記事を読もうとする方にわざわざ強調するまでもありませんが、よい辞書を選ぶことは語学学習には必要不可欠のことです。

語学学習というのは、どういう目的でやるにせよ、ある特定の言語の運用能力を手に入れることを目標としています。

そのためには、ざっくりいうと、文法と語彙を勉強する必要があります。

つまり、学んでいる言語の発音や文法 (どのように語を作るか、どうやって文を作るか) を習得し、その言語の単語や表現をどんどん覚えていくことが必要です。

文法を勉強するには、初級文法の授業を受けたり、自分で語学書を勉強するなどの方法があります。

例えば、タガログ語・フィリピン語については私が担当する東京外国語大学オープンアカデミーの授業があります。

一方で、語彙の方はというと、もちろん授業や語学書で学ぶこともできますが、それだけでは足らないことがふつうです。

なぜなら、第一に、授業や語学書でカバーできる単語には限界があり、第二に、語学学習の目的は多様で、目的に応じて必要となる語彙も異なるからです。

日常会話ができるようになりたい人と、特定の分野の文献が読みたい人とでは、身につけるべき文法は同じですが、語彙は違うでしょう。

そういうわけで、語彙を学ぶときに必要になってくるのが辞書です。

辞書をきちんと使うことは語学力向上に必須です。

タガログ語・フィリピン語のいい辞書は?

語彙を学ぶときに辞書が必須であることはもちろんなのですが、実際には、全ての言語できちんとした辞書があるというわけではないのも事実です。

英語や日本語のような、話者人口が多く、学習者も多い言語だときちんとした辞書はいくつもあるのですが、それ以外のほとんどの言語だとそういうわけにもいきません。

この記事のテーマであるタガログ語・フィリピン語ですが、フィリピン共和国を代表し、話者人口が1億人を超えるような大言語でありながら、実はいい辞書がたくさんあるわけではありません

そこで、ここでは、これからタガログ語・フィリピン語を勉強しようという方、あるいは実際にもう勉強しているという方のために、この言語の辞書をいくつか紹介したいと思います。

選んだ基準としては、

  • 内容が信頼できること

  • 単に単語とその意味のリスト以上の情報が含まれていること

  • 日本でできるだけ手に入りやすいこと

という観点から選びました。

一方で、「日本語で書かれていること」は基準に採用していません

その理由は、一つに日本語よりも英語の方が大きな本格的な辞書があること、もう一つはタガログ語・フィリピン語は英語と併用される場合が多く、この言語を使うなら英語の運用能力はいずれにせよ必須であるからです。英語も勉強できる辞書の方がいいという判断です。

では、さっそくご紹介しましょう。

Tuttle Concise Tagalog Dictionary: Tagalog-English English-Tagalog

おそらく今もっとも日本で手に入りやすく、しかも、初学者から中級レベルまでの単語をカバーしている辞書となると、Tuttle Concise Tagalog Dictionary: Tagalog-English English-Tagalog になるでしょう。

現時点では一番のお勧めです。

この辞書は、Joi Barrios 先生 (カリフォルニア大学バークレー校)、Nenita Pambid Domingo 先生 (カリフォルニア大学ロサンゼルス校)、Romulo Baquiran 先生 (フィリピン大学ディリマン校) によるものです。

どの先生も優れたタガログ語・フィリピン語の研究者・教育者で、内容的にとても信頼できます (Domingo 先生には UCLA の学会に参加したときにお宅に泊めていただくなど私もよくお世話になっています)。

タイトルのとおり、タガログ語から英語も、英語からタガログ語も、両方引けるようになっています

見出し語数は20,000語です。

多いとは言えないのかもしれませんが、たとえば、タガログ語・フィリピン語を日本や現地で使いたいとか、フィリピン人のちょっとした話を理解したいとか、そのくらいであれば十分実用的かと思います。

とてもコンパクトなので、いろいろなところに持ち運ぶことができます。Kindle 版もあるので、そちらを使えば、スマホでもパソコンでも使うことができます。

書誌情報はこちらです。

Barrios, Joi,‎ Nenita Pambid Domingo & Romulo Baquiran, Jr. 2017. Tuttle Concise Tagalog Dictionary: Tagalog-English English-Tagalog. North Clarendon, VT: Tuttle Publishing. ISBN: 978-0804839143.

Tagalog-English Dictionary

タガログ語・フィリピン語を勉強し始めようとするとほとんどの場合、まずは Tuttle Concise Tagalog Dictionary を利用するだけで十分ですが、もう少し大きな辞書を手元においておきたいという方には Tagalog-English Dictionary があります。

この辞書は、タガログ語・英語辞書として最も信頼できるものとして長らく使われてきた辞書です。

とても分厚い辞書で、Tuttle Concise Tagalog Dictionary に収録されていないような語彙まできちんと収録されています。本格的に勉強したい人にはいいでしょう。

一方で、収録語彙数が大きいということは、重いということでもあります。自宅にあるハードカバー版の重量を計測してみましたが、1,411 g ありました。みなさんのラップトップパソコンよりも重いのではないでしょうか。

また、事情により英語による語義説明が難しいことも多く、なかなか苦労します。

さらに、最大の「欠点」は日本で入手困難であることです。フィリピンにいけばだいたいどこの本屋でも売っていて、ペーパーバックなら2,000円程度で購入できますが、日本だとなかなか手に入らないかもしれません。

私は学部4年生のころに神保町にあるアジア関係の書店で手に入れたのですが、そのときは8,500円くらいだったと思います。

このように、なかなかハードルの高い辞書ですが、その分、ずっと使える辞書です。

まずは、Tuttle Concise Tagalog Dictionary で勉強して、フィリピンに行く機会があったら、現地で Tagalog-English Dictionary を買うという方針がいいかもしれませんね。

書誌情報はこちらです。

English, Leo James. 1987. Tagalog-English Dictionary. Manila: National Book Store. ISBN: 978-9710843572

デイリー日本語・フィリピン語・英語辞典

最後に一つ、日本語から引きたいという方のために『デイリー日本語・フィリピン語・英語辞典』を紹介しておきます。

この辞書は、その名の通り、日本語とフィリピン語と英語の3言語による辞書で、日本語から引くことでフィリピン語も英語も勉強できるというものです。

出版社のウェブサイトを見ると、さまざまな使い方を想定しているようです。

タガログ語・フィリピン語を勉強しようとする人は、英語も一緒に勉強する必要があるので、このようなフィリピン語も英語も勉強できる辞書はなかなか優れものですね。

この辞書は、大阪大学外国語学部で長らくフィリピン語を教えていらっしゃった大上正直先生の手によるものですから、内容が信頼できるのもいいところです。

一方で、日本語から引くのでタガログ語・フィリピン語がわからないときにはあまり便利ではないかもしれません。上に紹介した二つの辞書と平行して使うのが理想的です。

書誌情報はこちらです。

大上正直. 2018. デイリー日本語・フィリピン語・英語辞典. 東京: 三省堂. ISBN: 978-4385122861.

いい辞書でタガログ語・フィリピン語学習を楽しもう!

こういうわけで、タガログ語・フィリピン語の辞書をいくつか紹介してきました。

今回紹介できなかった辞書以外にもいいものがいくつかありますが、それはまたの機会に紹介したいと思います。

最後に、タガログ語の辞書についての注意をひとつ。

タガログ語から引く二つの辞書、Tuttle Concise Tagalog Dictionary: Tagalog-English English-Tagalog と Tagalog-English Dictionary はどちらも語根から引くタイプの辞書です。

「語根って何だ!?」とびっくりした方もいるかもしれません。

語根というのは言語学の用語です。文法用語ですね。これが何かはタガログ語・フィリピン語の授業の比較的早い段階で説明しますが、タガログ語の辞書を引くにはまさにこの文法の知識が必要なのです。

つまり、タガログ語は文法を知らないと辞書を引けないのです。

幸いにして、簡単な文法を知っておけば、語根を取り出すことは比較的簡単ですが、文法を知らないと辞書さえ引けないということになります。

やはり語学学習には文法も語彙もどちらも重要なのですね!

そういうことを念頭に置きつつ、今回紹介した辞書を使って、タガログ語・フィリピン語学習を楽しんでください!

近いうちに、タガログ語の辞書の使い方についても紹介したいと思います!

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