【第66回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その4
4作目は加藤シゲアキさんの『染、色』。
候補者について
加藤シゲアキ[かとう・しげあき]
1987年生まれ。大阪府出身。青山学院大学法学部卒業。株式会社 ジャニーズ事務所 所属。劇作家、作家、歌手、俳優、タレント。初の最終候補。
候補作について
2015年に刊行された『傘をもたない蟻たちは』に収録された「染色」を加藤シゲアキさん自ら戯曲化。昨年5月〜6月、東京グローブ座、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。演出は今回『彼女を笑う人がいても』で最終候補となっている瀬戸山美咲さん。
■時、場所
#1 美術室(滝川先生のアトリエ) 5月下旬、夕暮れ時
#2 学校 6月半ば、展覧会当日
#3 雁牧川沿いにある高架下 展覧会の後
#4 面接
#5 美術室 数日後
#6 通学路の高架下
#7 真未の家
#8 杏奈の家
#9 美術室 夜
#10 どこかの公園
#11 落書きされたいくつもの壁
#12 美術室
#13 真未の家
#14 面接
#15 美術室
#16 どこかの公園
(#16A 美術室、#16B)
#17 どこかの通り
#18 どこかの壁の前
#19 これまでのグラフィティの壁
#20 とある高架下
#21 どこかの通り
#22 病院
#23 居酒屋 3月?
#24 真未の家
■登場人物
深馬 美大生(油絵専攻)
小早川杏奈 深馬の恋人。吉満女学院4年生
北見 美大生(彫刻専攻)。深馬の友人
原田 美大生。深馬の友人
滝川 美大講師
真未 フードをかぶった謎の人物
■物語
深馬は一目置かれる美大生で、恋人や友人、先生から作品を期待されているが、本人は思い通りにならず悶々としていた。気を紛らわすように街の壁にグラフィティアートを落書きする深馬。しかしあくる日、その絵は自身が描いたものとはわずかに異なっていた。違和感の中で、深馬は何者かの気配を感じるようになり、色褪せていた日常は思わぬものへと変化していく。【Johnny's net onlineより】
総評
実際の上演は未見だが、原作短篇は読んだことあり。一読して感じたのは、やはり映像の仕事メインでやってきた方の戯曲だなということ(「#○○」という見出しからしてそんな印象)。決してそれは悪い意味で言っているのではなく、映像が浮かびやすくストーリーも追いやすい。その反面、真未の存在がいかにもなので正体が判明しても意外性が感じられなかった。
自身の短篇小説が原作とは言え、戯曲を書くのが初めてで岸田戯曲賞候補になったのは快挙ではあるが、「けなげだねなぁー」「声をかけてくれたはずわけだし」のように恐らくは推敲の過程で残ってしまった文言があったり、「バッグ」が「バック」になっていたり、「本物をなれる」といったてにをはのミスがあったりするのは残念。戯曲賞であるからには、そういったところにも気を配って欲しいところ。
あ、あと、44ページの「深馬に殴りかかる」は「北見に」の間違いでしょうな。