永遠に終わらない私の旅の荷造り
雷鳥沢での雷鳥とたわむれたキャンプ生活を終えることにした私。朝起きてみて、寝袋から抜け出し、今日は雨が降っていないし、テントを撤収するにはちょうどいい天気だと思い、キャンプ生活を5泊で終えて、その夜は富山駅付近のホテルで眠ることにした。楽天トラベルで当日予約もOKだったホテルドーミーインに決めて予約した。
さて、残るソロキャンプの作業としては撤収だ。
テントの撤収の時はいつも、「きっちりやりたい病」が発病し、いかに上手に収納できるかに夢中になってしまうのだ。
いつもは一緒にキャンプをする相棒が、
「もう!適当でいいから!」と私を叱りつけ、ぐちゃぐちゃに片付けていき、半分喧嘩になりながら撤収をする。
「いや、ペグについた泥を一つ一つ雑巾で拭かんでもええから!どうせまた地面にさすねんし」と怒られ(ほんまに無駄なことをしていると分かっているがやめられない)、
テントの中のゴミを、持ってきた養生テープでペタペタ取り除いていると、
「いや、そんなにきれいにしたいんやったら自分の部屋を掃除しぃ」と怒られる。
「放っといて!私が好きでやってるだけやから。きれいにやらな気が済まへんねんから」と私が口答えし、いつも険悪なムードになり、しばらく放っておかれて、その間いつも大体相棒は、朝ごはんを食べたり、着替えをしたりしている。
それでも寝袋を袋の形にきれいに丸めるのに必死になりすぎる私を、
「放っといたら日が暮れるから、放っとかれへんねん、はよ片付けようや!」と言われて、仕方なく諦めてぐちゃぐちゃに片付けていく。
いつもとても不本意だ。
人が片付けていくのを見ていると、ああ、どうしてその隙間にランタンを入れないのだろう、ぜんぜんきれいな形にたためていない…とモヤモヤして仕方ない。そんな私を無視してさっさとテキパキと片付けていかれ、お互い嫌な気分になる。あの険悪なムードが、ソロキャンプの今は懐かしい。
ソロキャンプだと、思う存分丁寧に片付けができるが、結局私は一人で撤収に3時間もかかってしまった。
寝袋なんかは3回もやり直して袋にきれいに丸めて入れた。
あんなのは、ただ突っ込めばいいのにだ。もうただの自己満足。
スイッチが入ると止まらない。
フォークの間まできれいにウェットティッシュで拭いて汚れを取ったりした。こんなのは家に帰ってやればいいのに。
分かっております。
だけどやってしまうのだ。
試験勉強の前の日の晩に、突然部屋を片付けたくなる人だ。
本来の目的を見失って、今やらなくてもいいことに熱中してしまう。今やるべきはさっさとテントを片付けること。ナイフを磨くことじゃない。
私の没頭を止める人も必要なのだなあと思うとキャンプの相棒が愛おしくすらある。
だけど、この日は、とても丁寧にテントをたたむことが出来て満足している。こんな満足感は初めてだった。
どこに何をどうやって片付けたかも全部自分の管理下で把握できた。
忘れ物をしたら自分だけの責任だし(案の定、温泉に洗顔フォームを忘れた。いつも人のせいにしてしまうけど今回はどう考えても自分のせいだった)、
自分の物だけを持ってきているから愛着もあって大切に片付けられる。
もしも雨なんかが降りだしてきていたら、そう呑気に片付けてもいられなかっただろうが、こんな時だけ雨は降らず、ラッキーだった。
とにかく思い通りの撤収方法で没頭できた。
そしてクタクタだった。
だけど、テントもしっかりと裏側まで乾かすことができて、服も汚れ具合で3パターンに分けて圧縮袋に入れた。
大満足。感動で泣きそうなくらいだ。
そしてゴミは、できるだけ小さくたたんで養生テープで小さくまとめたり、においが漏れないようにジップロックで厳重に封じ込めた。完璧。
ソロキャンプは一人で納得いくまで片づけてこそソロキャンプだと思った。
と、こう書くと、私はまるできっちりしたがる神経質な人間のようだが、本当はそうじゃない。
私は、片付けが致命的に下手くそなのである。
本当はさっさときちんと片付けられる人が羨ましい。
そうなりたいのだ。だけどなれない。
バックパックで旅していても、必ず何度も荷物をバックパックから引っ張り出して全部ぶちまけてしまう。
どこに何があるか確認して、これはこっちのポーチに入れた方が都合がいいのでは?と思って入れなおして、結局いざという時にあれはどこへやったっけ?と焦る。
出発前の荷造りの時に試行錯誤して、これが正解のパッキングや!と時間をかけて導き出した収納方法だったはずなのに、旅先でごちゃごちゃ変えたくなってやり直したくなって、無駄な時間を費やしてしまう。
これで何度イヤホンや耳栓やケーブルをなくしたことか。
そろそろ荷造りが上手になっていいはずなのに、そうならないのは経験の数ではない、多分もって生まれた才能の無さだと思う。
そんな片付けられない女代表、人呼んで「散らかしの天才」の私だが、ある程度はルール化されて効率化されてきている面もある。
その1)
洗面道具は全部1つのジップロックに入れてそれごと無印の吊り下げポーチに入れて、バックパックの表のポケットに必ず入れること。
その2)
ノートやタブレット、レインウェアはバックパックの一番トップのふたの部分のポケットに入れること。
その3)
薬類、リップクリーム、日焼け止めはモンベルのミニポーチに入れてバックパックの横にくっつけておくこと。
このルールはどこに旅に出ようと自分が決めたルールなのでこの通りに守るようにしていて、おかげで、物をなくさないし、探さないですむ。
なのに、
「予備の方のリップクリームはどこに入れたっけ?」
「酔い止めの薬だけはすぐに出せるようにどこかに入れたけどどこにやったっけ?」
「ボールペンはよく使うからやっぱりサブバッグに入れとこうと思ったけど入っていないがどこへやったっけ?」
と、毎回、自分で自分の作ったルールを破った時にパニクってしまう。いらんことをしなくていいのだ、私は。
「上手に手際よく収納する」というのは、走り高跳びで高く飛べる人くらいの、抜きんでた才能が必要なのだと思う。
富山のホテルでまた荷物を全部引っ張り出して、片付け直している私はそう思えてならない。
だけど、やっかいなことに私は荷造りが嫌いじゃないのだ。
何度でも、何時間でも、片付けや荷造り、収納の正解を探して試行錯誤して没頭したい人なのだ。
こんなに時間をかけてトライ&エラーを繰り返しているのに、結果が伴わないのが非常に残念だが、正解に全然辿り着けないので何度も試せる。いいのか悪いのか。
はっきり言って、いつも旅先での睡眠時間はこれのせいで多少、削られている。
そんなことを思いながら、富山のホテルのベッド全面にぶちまけて、ひっくり返った全部の荷物を見ながら、腰に手をあてて首をひねる。
さあ、今日こそは正解を見つけたい。
「寝袋はもしかしたら丸めずに、四角くたたんだほうがかさばらないのではないか?」という今更の謎の疑念が浮かぶ。
ああ、試したい。今はそのチャンスだ。睡眠時間を削ってでも試してみたい、やり直したい。ムズムズする。
そう思い、今夜もまた、方向転換した荷造りを再開させるのであった。
私の旅はこれからも終わらない、みたいなニュアンスのタイトルになってて、タイトルがオシャレな雰囲気を漂わしていますが、内容は本当に永遠に終わらないパッキングの話でした。
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