重い荷物を一つ下ろそうとしている 【山ごもりの夏休み③】
今日は一日中、テントの中でじっとして過ごすことに決めた。
本当は立山に登る予定にしていて、そのために昨日は早く寝たのに、4時に起きたら土砂降りの暴風雨で、寝袋の頭の紐をギュッと締めて二度寝を決め込んだ。
その後、また起きてもまだ雨で、寒くて寝袋にくるまったままタブレットでAmazonプライムの映画をいくつか見た。
「春を背負って」という映画が立山が舞台らしく見てみることにしたら、豊川悦司が60kgの荷物を背負って私の今いる場所を抜けて立山を登っていた。トヨエツ先輩、さすがです。松山ケンイチは30kgでへばっていた。
映画は正直、昭和の東宝映画かな?と思うほど古くさくて普段なら見ないタイプの邦画だったが、今自分のいる場所の少し上の山小屋の話だったから最後まで見れた。
蒼井優演じるあいちゃんが自分の過去を話すシーン。
トヨエツ演じるごろうさんが「話したいことがあったらなんでも話したらいい」と言い、あいちゃんが辛い過去を打ち明ける。あいちゃんが席を立っている間、
「あいちゃんは今、自分が背負っている荷物の一つを下ろそうとしている」
とごろうさんが静かに言う。
松山ケンイチ演じるトオルが「重かったんだろうな」と呟く。心の避難小屋である山小屋でのシーンが印象的だった。
それから、荷物を一つ下ろしたあいちゃんは、今度はトオルに「たくさん酸素をあげますね」と言った。
私もカミーノを歩いていた時、物理的に必要ない荷物を仲間と一緒に処分して少しずつ減らした。こんなのは要らないよ、と思い切って捨ててくれた人たちに感謝している。自分が生きていくのに必要なものはたった12kgだったと知った。そして、その仲間といろんな話をし、歩きながら自分ともゆっくり対話して、気持ちが軽くなり、心理的な荷物も減らせた。私はあの800kmの旅で荷物を一つ、いや、いくつか下ろしたんだと思う。
それとは真逆になぜか35kgもの荷物を担いで、ソロキャンプに来てしまった。重すぎる私の荷物。また要らないものを、知らない間に私は背負ってしまっているのだろうか。
いや、今の自分を軽くするためにここにやってきたわけで、そのために必要な重さだったような気もする。
酸素を思い切り吸うために来た場所。
山に登りたかったけど、今日も明日も明後日も晴れそうにない。唯一晴れた昨日が山に登るチャンスだった気がする。
昨日はゆっくりしたかったから仕方ない。
昨日、いっぱい撮った写真を。
今年はカミーノに行けなくてがっかりしていたが、こいつを持ってくればどこでもカミーノになることを発明した。
題して「ポケットにカミーノ 」
今日は今から1時間くらい歩いて水をくんで、カツカレーでも食べに行って、温泉に入ってまた映画を見て過ごす。
拾ってきた雪で冷やしたビールを飲みながら。
のんびり、ゆっくりと。
こうしてここでマスクを外して、酸素を思い切り吸って、
荷物を一つ下ろそうと思う。
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