大学教員がしていること
「大学教員とは学生を変える仕事だ」
大学教員になって25年が経った今の私の考え方です。
人によって答えは違うでしょうが、私の答えはこれだと思うようになりました。
いやいや、人を変えるなんておこがましい…と言われそうですが、やはり、そうなんです。
もちろん、人が他者を思い通りに変えられるとは思っていません。また、そんなことを考えるべきでもないでしょう。
そうではなく、思いもかけないところで人は他者を変えるきっかけを作ることがある、大学教員がしているのは、学問を通して学生を変える、そんな仕事なのではないか、ということです。
小中高と違って大学には学習指導要領はありません。
個々の教員が(文科省や学内の一定のルールの範囲内で)自由に教育を行うのが大学です。
自分の専門領域の知識を伝授したり、一緒に考えたり、議論したり、また専門を離れて様々なものごとについて語り合うことを通して、教員は学生を変えていく存在なんです。
より正確に言えば、学生が変わっていくきっかけをつくること、それが大学教員の仕事だと思います。
一定の方向に学生を導くのではなく、ましてや特定のスペックに合った人材に育て上げるのでもない。
学生の人生は学生自身のものであって、教員が左右しようとすべきではないし、ましてや教員のコピーをつくろうとしてはいけないのです。
別個の人間として、学生と向き合い、語り合う。時間を共有することをとおして学生が自ら変わっていく手伝いをする。それがリベラルな教育ではないかと思うのです。
1997年に英国でこの仕事を始めたときには、思いもしなかったことですが、四半世紀も大学教員を続けて、ようやく「私にとって大学教員という職業は何を意味するのか」を言語化できたような気がします。
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