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高校公共「国際政治の動向と課題の要点」

国際政治の動向と課題の要点

現代の国際社会は、国家間の相互依存が進む一方で、地政学的緊張や経済的不均衡、環境問題など、複雑な課題に直面しています。グローバル化の進展により、国家の枠を超えた協力が求められる一方で、各国の利害対立や主権意識が調整を困難にしています。本課題では、国際社会が直面する主要な動向と課題を概観し、それに対応するための取り組みや課題解決の方向性について考察します。

主な動向

  1. グローバル化の進展
    経済・技術の発展により、国家間の相互依存が深まり、国際的な協力が重要になっている。

  2. 多極化する国際秩序
    アメリカや中国などの大国が台頭し、単一の超大国が主導する時代から複数の中心が存在する時代へ移行している。

  3. 国際機関の役割の変化
    国連やWTOなどの国際機関が課題解決に向けて努力しているが、各国の利害調整や機能の限界が指摘されている。

主な課題

  1. 地政学的緊張
    領土や資源をめぐる争い、核兵器や軍事力の拡大による地域の不安定化。

  2. 環境問題と気候変動
    地球規模での協力が必要な課題だが、各国の利害対立が進展を阻む要因となっている。

  3. 経済的不平等
    発展途上国と先進国間の格差や、経済的な覇権をめぐる競争。

  4. 人権と移民問題
    難民・移民の受け入れ、民族紛争、人権侵害などへの対応が課題。

解決への取り組み

  • 国際協調の推進: 国連や地域協定を通じた共同対策。

  • SDGsの達成: 持続可能な開発目標を通じた課題解決。

  • 対話と外交: 対立する国家間の平和的な交渉の強化。

主権国家の誕生

16世紀から17世紀のヨーロッパでは、封建制度がくずれ、それまでヨーロッパ世界を支配していたローマ教皇と教会の権威が弱まり、国土が絶対的権力をもって国民と領土を支配した絶対主義国家が生まれた(主権国家の原型)。市民革命を経て、国家と国民との一体性が自覚されるようになり、国民国家として発展した。

国際社会の成立後

  • ウェストファリア条約…1648年締結。三十年戦争の戦後処理のための講和条約。各国の主権の独立と平等が確認され、国際社会が成立した。

  • 主権国家…最高かつ絶対的な政治権力をもつ。独立しており、他からの干渉を受けない国家のこと。

  • 国際社会…主権国家を単位として構成される。

  • 国際法…国家間の一般的な慣行である国際慣習法と明文化された国家間の合意である条約からなる。グロティウスは国際法を理論的に体系づけた。

国民国家とナショナリズム

市民革命や独立運動を経て成立した国民国家では、帰属する国家・民族・文化・歴史等を1つの単位とみなし、称揚するナショナリズムが盛り上がりを見せた。

  • 民族自決…ヨーロッパ諸国はヨーロッパ以外の地域の主権を認めず、次々に植民地化した。植民地となった地域では第二次世界大戦後、自民族による民族自決主義が高まり、ナショナリズムを掲げて、闘争を経て独立していった。

  • ナショナリズムの種類…ナショナリズムは国民主義、国粋主義、民族主義などと訳され、今日では多様な意味で使われる。郷土愛に基づくパトリオティズム(愛国主義)とも近似した使われ方をすることがある。

国際平和の構想

国際平和の提唱 多くの思想家が永久平和の実現について考えてきた

  • サン=ピエール…フランスの聖職者。『永久平和論』を発表し、戦争の放棄や平和のための恒久的な国際機構の設立などを説いた。

  • ルソー…社会契約説に立って、人民が中心になった民主主義国家を建設し、その連合によって国際平和が実現すると述べた。

  • カント…ドイツの哲学者。『永久平和のために』を著し、専制主義や常備軍の排除、自由な共和制国家による国際平和機構の設立の必要性などを説いた。

国際協調の進展

  • 国際組織の設立…国際社会の中でそれぞれの主権国家どうしが相互に合理的 な調整をはかるために、国際協力組織が設立された。国際電気通信連合や万国郵便連合などが代表例。

  • 国際裁判の開始…1899年のハーグ平和会議において常設仲裁裁判所が設置された。1921年には国際連盟に常設国際司法裁判所が設けられた。

  • 国際司法裁判所…第二次世界大戦で一度機能停止した常設国際司法裁判所であったが、国際連合の国際司法裁判所として1946年に継承された。1996年には国際海洋法裁判所が、2003年には国際刑事裁判所が設置された。

  • 国際刑事裁判所…1998年採択の国際刑事裁判所設立条約に基づき、2003年に発足。紛争時における集団殺害犯罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪、侵略犯罪について個人を裁く。日本は2007年に加盟。アメリカ・ロシア・中国・インドは未批准。

  • 地域的な国際裁判所…欧州人権裁判所や欧州司法裁判所など。欧州人権裁判所は、欧州評議会加盟国の人権救済機関。個人や団体による提訴も可能である。欧州司法裁判所は、EUの最高裁判所にあたる。

国家間の安全保障の形態

同盟・敵対関係による集団形成…協調する国家で集団・グループを形成する。しかし、同様にその集団に敵対する集団も形成される。第一次 世界大戦前の三国協商と三国同盟など。また冷戦中のNATOとワルシャワ条約機構など。

  • 力の均衡による抑止…お互いに同程度の勢力を保ち、攻撃を仕掛けられないような状況をつくって安全を図る。

勢力均衡の方式の問題点

  • 軍事バランス…軍事的勢力に大きく差があると抑止力にはならない。

  • 軍拡競争…互いを潜在的脅威とし、対抗する形で軍拡競争が続けられるので戦争になりやすい。

  • 硬直化…協調・対立関係が固定され、関係が硬直化すると戦争になりやすい。

集団安全保障の方式

  • 加盟の原則…利害が異なる国家も含めて、関係国が例外なくメンバーとして安全保障体制に参加。

  • 制裁…平和を乱した国家がある場合、他のメンバーが協力して、違反国に制裁を加える。国際連盟や国際連合はこの考え方に基づく。

国連の平和維持活動

冷戦終結後、PKO(平和維持活動)は国連の安全保障・紛争の平和的解決の手段として重要視され、活動の幅を広げるようになった。

■ PKOの3原則

  1. 関係国の同意を必要とする。

  2. 中立性を保つ。

  3. 自衛以外の武力を行使しない。

の3原則に基づき活動している。

平和維持活動の概要

紛争地において、紛争当事者間の停戦合意が成立した後に、安保理または総会の決議に基づいて停戦、双方の軍の撤退を監視することによっ
て平和的な紛争解決を図る。紛争後の民主的選挙の監視団の派遣や文民警察の派遣、難民帰還の支援復興開発の支援と活動の幅が広がった。

PKOの規定

国連憲章にはPKOに関する規定がない。国連憲章第6章では紛争解決に関連する勧告等についての規定があるが、PKOの根拠規定はない。一方、第7章42条では軍事力を伴う強制措置について規定するが、PKOの根拠規定はない。そのため、PKOは6章半の行動と呼ばれることがある。

PKF(平和維持軍)

PKOに基づき派遣される各国軍隊。紛争当事者間の兵力引き離しや非武装地帯確保、停戦監視などに当たる。国連加盟国が自発的に提供するものであるが、原則的には派遣国ではなく国連の指揮下で活動する。

多国籍軍

多国籍軍は安保理の決議に基づいて派遣されるが、国連の指揮下にはなく、派遣国の責任において大規模な武力行使を行う。

  • 湾岸戦争、ソマリア、コソボ、アフガニスタンなどへ派遣された。

国連軍

国連憲章第7条42項に根拠をもつが、現在まで正規の国連軍が派遣されたことはない。

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