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《漢方処方症例検討》辛い症状が多い・病名や症状名ではなく表現しにくい症状がある
中医学・漢方薬・薬膳が大好きな方や、お勉強中の方に症例の弁証から投薬や薬膳について書いています。
今回の症例は、70代女性の「辛い症状が多い・病名や症状名ではなく表現しにくい症状がある」です。
症状が多い方
神戸市中央区の漢方薬店で、漢方カウンセラーとして診断して10年。
「本物の中医学」で薬膳を伝えて15年。
10000人以上に中医学で心を笑顔にしてきた池田のりこです。
薬膳のセミナー、講演、企業様での研修、漢方薬のカウンセリング、レストランの薬膳監修などをしています。
漢方相談の方の症例で、主訴は「不眠」です。
随伴性が多いです。
お客様の言葉をそのまま活字にしています。
問診日:2024年5月29日(水)
情報:Aさん(70代女性)
主訴:不眠
寝付きが悪い
眠剤を飲んでも2時間で目が覚める
頭はボーっとしているが冷蔵庫を開けてご飯を食べてしまう
食べたあとはすぐに眠れて朝まで眠れる
翌日お昼まで胃もたれしている
悪夢を見る
随伴証:
(1)舌が痛い
舌の表面がヒリヒリする
毎日ではなく、週の半分ぐらい
マウスジェルを付けると少しラク
(2)両ひざ下のしびれ
朝は大丈夫で、午後にビリビリする
サポータをすると少しラク
お風呂に入っても変わらない
左膝:去年骨折
右膝:10年前に骨折
(3)子宮がグニュグニュする
4~5年前に痛みがあり検査をするが問題なし
いつもはすぐに治るけど今回は長い
カイロを貼るとラクになる気がする
陰部の匂いが気になることがある
(4)胃がおかしい
お肉を食べたあとに胃がうごかない
食欲がないこともある
胃薬を飲んでも改善しないことがある
おなかが空かない(3日に1回ぐらい)
(5)頻尿(1日10回以上)
緊張することがあるとトイレが近くなる
夜は目が冷めたついでにトイレに行く
(6)アレルギー
何十年も薬を飲んでいて治まる
くしゃみ、涕、山の近くに行くと痒くなる
辛い症状が多い方の問診
気になる症状がひとつだけだったり、分かりいやすい症状だといいのですが、そうでない場合は難しいですよね。
何から手を付けたらいいのか、何を聞いたらいいのか…
心の中で「もうそれ以上言わないで…」と思ったり。
このようなときに私がどうしているのか?をお伝えしますね。
「気になることがいっぱいあるんです!」とお客様に言われたら、「5分以内にぜ~んぶ教えて下さい!」と時計を見せて言います。
時間制限を設けることで(実際には測りませんが…)、お客様は「短くまとめよう」と努力をして下さいます。
そして、言われたことを全部記録します。
「全部言えましたか?」と聞いても、まだまだ出てくることもありますが、とにかく聞きます。
「もうないです」と言われたら、「辛い順に番号をつけていきますね。どれがいちばん早く治って欲しいですか?」と言いながら、優先順位順に番号をつけます。
それをお客様に見せて「この順番で間違いないですか?」と共有します。
ここから問診が始まります。
長いのですが、この時間がとても大事です。
お客様は「この人は話を聞いてくれる」と思って心を開いてくれます。
漢方薬店に来られる方は、病院で悲しい思いをした方が多いです。
しっかり寄り添ってあげましょう。
問診のコツ
今回いちばん困ったのは、「子宮がグニュグニュする」ということ。
グニュグニュってどういうことだ…と頭の中に「?」がいっぱい…
「動いている感じ?」→「違います」
「下がっている感じ?」→「下がるってどういうこと?」
「痛いの?」→「痛くないです」
ここで諦めない!
「うーん、なんだろうなぁ。どういう感じか知りたいんですよねぇ。
人生ではじめての経験ですか?」と聞くと、「出産のときに近いかも」という大ヒント!!
もう「来た~!!」という感じです…(笑)
まだまだありました…
「なぜ夜中に起きてご飯を食べる…」
「舌の苔をブラシで取ってるんじゃない?」
「トイレが違いのはお水飲みすぎてるんじゃない?」
細かく細かく、聞いていくのです。
私はすぐに忘れてしまうので、全部記録しています。
擬音語で表現されたら、擬音語で記録します。
あとで見たらさっぱり分からん…ということも多々ありますが…。
視座を変えて診る
漢方相談で大事なことは、答えを当てに行かないこと。
自分が知っている情報や知識でなんとかしようすると危険です。
それは、お客様のためではなく、自分が認めてもらうためになってしまうから。
そうではなく、今目の前にいるお客様をいろいろな角度から見ていきましょう。
広く見たり、狭く見たりしながら、「その人全体」を観察していきます。
なぜ眠れないのか?
なぜ食べてしまうのか?
なぜグニュグニュするのか?
なぜ舌がヒリヒリするのか?
・主観を入れない
・感情を排除する
・「治してあげたい」という執着を捨てる
これをひたすらやっていきます。
「治してあげたい」というのは、エゴなんですよねぇ…
それは結果論であって、まずは「何が原因なのか?」を診ることが最優先です。
診断のポイント
情報が多いときは、早めに舌を診ます。
この方は、やや胖大で舌尖が広範囲で紅、白~やや黄膩苔、舌下静脈細でした。
精神的にお辛いことがあるんだな…というのがすぐに分かります。
そこで「具体的に話さなくてもいいのですが、いつも気になっていることや、解決できずに悶々と考えていたり、自分を否定していることはないですか?」と聞きました。
すると涙を流しながら話して下さいました。
ここでは具体的な内容は控えますね。
九星気学の星を見ると「なるほど…」という星だったので、じっくりと話を聞きました。
九星気学を知っていると、その方の心に響く話し方ができたり、喜んでもらえる言葉を使ったり、励ますこともできます。
これはみんな違うので、マニュアルなんてないです…
弁証と治法
いろいろと症状があるときには、優先順位順に番号をつけていき、上位3つぐらいまでを診ます。
ここで、標なのか本なのかを見極めていきます。
治療を進めていくと、それが変わっていくので、丁寧に診ていく必要があります。
Aさんの上位3つの症状はこちら
(1)舌が痛い
(2)不眠
(3)子宮がグニュグニュする
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¥ 490
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