暗黒の乃木神社と暗黒の二百三高地vol.5
🌟満州軍「望台を取れ!」大本営「二百三高地を取れ!」錯綜する命令に翻弄させられる乃木将軍と第三軍
第二次総攻撃の失敗は海軍を落胆させ、バルチック艦隊の来訪に気をもむ海軍からは要塞全体の攻略よりも旅順艦隊を観測射撃する事が可能な二百三高地の占領を最優先にしてほしいという意見が出ます。しかし、要塞全体の攻略にこだわる第三軍の上級司令部である満州軍は望台という場所を占領する事を最優先にする方針を変えませんでした。
11月14日、二百三高地に固執する参謀本部は御前会議で「二百三高地主攻」を決定しました。しかし満洲軍総司令官大山巌元帥はこれに反対の立場を取りました。そして、大本営からの要旨にある「旅順港内を俯瞰し得る地点を占領し、港内の敵艦、造兵廠などに打撃を与うることをのぞむ」で、二百三高地を直接名指しして命令していないことを逆手に取り、「第三軍司令官をして、是迄の計画に従い鋭意果敢に攻撃を実行せしめ、旅順の死命を制し得るべき『望台』の高地を一挙に占領せしむるの方針をとるべし…」「二百三高地を落としても観測点として利用するだけでしかなく、砲を備えて敵艦を沈めるには長大な期日を要し、目的を達成できない」などと反論し、要塞東北方面攻略の立場を崩しませんでした。実際、11月23日には第三軍に対して望台を取れという命令がなされています。
「第三軍命令十一月二十三日午前十一時於柳樹房 一、軍ハ来ル二十六日ヲ以テ攻撃ヲ再興シ望台一帯ノ高地ワ奪取セントス 」
総参謀長の児玉源太郎大将も、10月までの観測砲撃で旅順艦隊軍艦の機能は失われたと判断して艦船への砲撃禁止を第三軍に命じたそうです。また海軍のバルチック艦隊来航の脅威を必要以上に誇張し、海軍の都合だけ考えて海上輸送を中止しようとする一連の動きに対しても抗議しました。
しかしながら、こういった上層部の意見の食い違いは乃木将軍と第三軍を混乱させ、結果的に旅順要塞攻略にも大きく影響してしまったのです。
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