半年目のClubhouse
【日本では半年目のClubhouse】
日本では、今年の1月頃から、Clubhouse(音声SNSと言われている)が、大きくマスコミなどでも取り上げられるようになり、有名人と直に話ができる、ということでも、多くの人を惹きつけた。さらには、当初はiPhoneなどのiOSデバイスだけで動くので、Androidなどを使っているユーザーは使う事ができず、さらには「招待制」で、メンバーの招待がないとアプリを使うことができなかった。この「特別感」を満たしてくれた、ということで、話題になった。そして、1月の半ばから2月くらいには「盛り上がった」という感じがあって、私もその頃にメンバーになってClubhouseを使ったのだが、そこにある「エネルギー」を、Clubhouseのアプリをタップするだけで感じられた。日本では、諸外国と比べてスマートフォンといえばiPhoneのユーザーが多く、スマートフォンのシェアの半分くらいなので(他の国や地域ではおおよそ3割くらい)、Clubhouseにハマって寝不足、という人も日本では多く見た。いや、Clubhouseで聞いた。
【5月頃にAndroid版ができたが利用者数激増とはならず】
とは言うものの、Clubhouseの日本での爆発的なブームから2か月ほど経過した5月くらいにはClubhouseの当初にあった「熱」のようなものがだんだん失われてきた。5月20日前後に、ClubhouseのAndroid版がベータ版として市場に投入されたが、2月頃のユーザー数の伸びには届かず、ということになった。世界的には、Androidのユーザー数のほうが多いから、本来であれば、更に多くのユーザーが得られるはずではなかったか?あくまで、個人的な見解なんだが「Android版は投入時期が遅すぎた」と思う。これが3月くらいだったら、おそらく更に現在より多くのユーザーが増えていたんじゃないか?と、私は思う。
【他社も始め、「音声SNS」は戦国時代に突入】
Facebookは4月に「Live Audio room」をはじめた。twitterも「Spaces」を始めた。Spotifyが「Green room」というClubhouseのようなものを、6月中旬に始めたが、Green roomは招待は必要無く、誰でも入れる。ここにも入って見たが、Clubhoouse運営からログイン拒否された人たちでGreen roomを使うようになった人たちもかなりの数を確認した。しかしながら、現在この投稿を執筆時点でも、なかなか安定しない。バグ取り中・拡張中、という感じだ。とは言うものの、Clubhouseの当初のユーザーが他のところに拡散した、ということよりも「並行して他のものも使うようになった」、という感じがある。他にも、大手だけではなく、いくつかのITサービス企業がClubhouseの「二匹目のどじょう」を狙って動いている。
【Clubhouseは半年で停滞か?】
世間の「遅れた動き」よりも、Clubhouse内部でも、実際にroomを立ち上げて使っているのは、たとえば、ビジネス本の著者とか、編集者の集まりやマスコミ関係者、一攫千金の話を怪しげに語る「ネットワークビジネス(昔で言うところの「ネズミ講」のようなもの)」の集客目的や、既に居るメンバーの引き止め用のroomばかりで、時々、有名人が語ったりするroomもないではないが、ユーザーは「必要になればアクセスする」という程度の使い方をする人が増えた。2月くらいにClubhouseで少し親しくなった人たちも、3月から4月の仕事の繁忙期などを経て、既に5月の連休には、軒並みいなくなっていった。繰り返すが、Android版の供給がこの頃までにあれば、更にClubhouseのユーザー数は拡大できていたかもしれない、と、個人的には思う。最近は一人とか二人だけでぼそぼそと話すroomが多数立ち上がっていて、それはGreen roomなどでも同じ感じがある。既に参加者の「選ばれた感」も「特別感」もなくなった。あの半年前の「(なんかおもしろそうだぞ、という)熱」も、今はなくなったように、私には見える。
【技術的な話など】
もともと、Clubhouseを支える音声技術は「音声をデータにする」「データにした音声を元の音声に戻す」という「IP電話」の技術が元になっていて、10年以上前からある技術である。現状では取り立てて目新しいものではない。Clubhouseは、この既存の技術をうまく組み合わせてアプリにし、「招待制」「iOSのみ」「目新しさ」が、偶然にもマーケティングとして成功する元となった。
【音声SNSの利点と制約】
音声SNSは未だに電話でのコミュニケーションが主流の人たちには、ベストな選択のように考えられたが、音声SNSの制約として、同じ時間に同じroomにいなければ、双方向のコミュニケーションが成立しない、という問題もある。国をまたいでの会話はできるが、時差はどうしようもなく、言語の壁もある。この制約の中で、Clubhouseは大成功した、と言っていいであろう。しかし、その成功は長くは続かなかった、というのが、私が思っていることだ。
【音声SNSはどこへ行くか】
この「音声SNS」というカテゴリーそのものは、これから他のSNSと同じように、細々と残る分野になるだろう。簡単に言ってしまえば、よほど今後のブレイク要因がなければ、そのあたりが行き着くところだろう。「Clubhouseも普通のネットサービスの1つになった」のだ。しかし、半年でこれだ。今の世の中はかつて言われた「dog year」から「cicada(蝉) year」のスピードになった、ということなのかも知れない。
【惰性と倦怠と人のつながりと】
実際のところ、自分としてもClubhouseには飽きてきたので、このところ行くことが少なくなった。行くのは惰性になってきて、倦怠もある。そこでできた人のつながりがあるからそこに行くが、明らかに行く頻度は減った。自分の場合は「書く」「読む」コミュニケーションがやはり得意だ。長々と無駄話をしゃべるのは苦手だ。くだらないと思われる話にもうなずきながら楽しむ、という趣味がないのだ。やはり人による。それぞれ個性があって、Clubhouseのようなもので喋ったり聞いたりするのが楽しみという人もいるが、自分は楽しみにならない、ということがある。だからClubhouseからは、どんどん遠ざかって行っている感じがする。
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