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AIについて本当のことを書こう
【AIはなぜ騒がれたのか?】
今となっては「IT=AI」のように言われることが多くなったが、AIのもともとをたどると「Deep Learning」という技術である。この技術は、ソフトウエアの技術で古くから知られていたが、ハードウエアの性能の劇的向上(計算速度とデータ容量)とそれにもかかわらず劇的な低価格化が可能になり、大量のデータの計算能力を持つコンピュータでも、手軽に庶民が買える値段になったので、Deep Learningを身近に見ることができるようになった、ということだ。
【素晴らしい技術だけでは世の中に認知されない】
世の中には「Aという素晴らしい技術」だけではそれが世間に広まらない、ということがけっこう当たり前にある。「Aという技術」だけではなく、それに「お金(多くはコストダウン)」+「その他の条件」が重なって、はじめて「Aという技術」を多くの人が知り、それが多くの人が使うところとなる。
これはIT技術以外でも同じだ。
【「自動車」と「道路」】
たとえば、身近な例で言えば「自動車」である。自動車は日々進化をしている新製品が世の中に出ていて、それは当たり前のこと、と今は思える。しかし、世界中・日本中に、舗装道路網が整備されて、はじめて高速で道路を走る自動車がその価値を持つ。つまり「道路の技術」があって「自動車の技術」が進化している。この「自動車」と「道路」の技術は「物流の増加」などの需要にこたえる技術である。つまり、「自動車」「道路」という技術は経済の発展などの「環境の変化」がなければ必要とはされなかった。その価値が世間に認められたから「自動車の技術」が必要になり、自動車を効率的に動かすために「道路技術」が必要になった。そして「自動車」と「道路」が更に「経済の発展」を促し、さらに「自動車」と「道路」が発展した。そして、自動車は誰でも使えるように「高性能で安全で安く」なった。技術も向上したのだ。
【「有名な人」も同じ】
さらに視野を広げて見れば、世の中も同じようなものだ。一例として「素晴らしい音楽を奏でる音楽家・演奏家」だって同じだ。普通はいくら音楽の技量を上げたところで、多くの人はその人を知ることもない。しかし、誰かが「この人は素晴らしい音楽を作る」ということを認知し、それを誰かに伝えれば、その話が世の中に広まっていく。そして、音楽家は多くの人の知るところとなる。そして。。。そうだ。人の社会とはそういったものだ。
【AIとはITそのもののこと?】
世間一般では「AIは人間のように振る舞って人間の代わりに言うことを聞いてくれる便利な機械」と思われている。しかし実際にその仕組みを作るITの技術者の現場では、その要の技術は前述の「Deep Learning」である、と認識されていて、多くのIT技術者はDeep Learningの技術を習得することに力を入れている。しかし、世の中の多くの人がお金を出したくなる技術「AI」は、Deep Learning「だけ」では足りない。
【AIはAIでなくても「AI」】
だから、実際にはDeep Learningを使っていないITの仕組みでも、セールストークとして「AI技術です」と言って売る。これも世間一般から言えば間違いではない。なぜなら、ITの仕組みそのものが世間一般で言う「人間のような動きをする便利な機械」であることに変わりはないし、そうであるからこそ、多くの「一般の人」はそれにお金を払うのだから。つまり「AI」という「キーワード」は、今や当たり前になった「IT」を、新しいものとして、買うのにお金を出しやすくする、というITのシステムのセールスのためのキーワードである。しかも、嘘ではない。お菓子で言えば「これはカロリーの多い本物の生クリームを使ったお菓子ではなくて、新開発のダイエット用のローカロリーのクリームで作ったお菓子です」と言うようなものだ。どっちを買うかって?そりゃ「ダイエット」の名前のついたお菓子を買うでしょ、ってことですね。ローカロリーでも食べ過ぎれば意味ないですけど(←余計)。
【Deep Learninngとはなにを実現する技術か?】
では、この「AI」というキーワードのベースにある「Deep Learning」でなにができるかというと、例えばこんなことができる。最初にシステムに「犬の写真」を「これは犬の写真です」と大量にデータベースに覚えさせる。次に「猫の写真」を大量に「これは猫の写真です」と、大量にデータベースに覚えさせる。そして次に、猫か犬かわからない写真をシステムに見せて「これは猫か犬か?」と質問すると「それは犬です」「それは猫です」というどちらかの判斷を示してくれる、というものだ。実際にはDeep Learningに加えて「ニューラル・ネットワーク」という技術が使われ、大量のデータから「特徴抽出」がされたデータを作り、それを元に判斷する。
【犬と猫と熊と人間と男と女】
「おおー!便利じゃん!」と思うかどうかは別にして、なにかに役に立ちそう、と思うかも知れない。しかし、例外に対処させるのは難しい。ここでシステムに「熊の写真」を見せても、システムは「猫です」と言うかも知れない。人間から見れば「違うじゃん!使えない!」ということになる。システムには「犬の写真」と「猫の写真」しか見せていないのだから、システムは「熊」を知らないのだから、そう判斷せざるを得ないのだから仕方がない。そこで、今度はシステムに「熊の写真」を大量に覚えさせて、はじめて熊を熊と認識して答えを出してくれる。では、人間は。。。男と女は。。と、さらにさらに大量のデータが必要になる。これが「Deep Learning」のシステムである。覚えさせればさせるほど、賢くなる(ように見える)。
【「安い」は重要】
つまり「Deep Learning」が人間のように働くには「大量のデータ」を「高速で」扱う必要がある。しかし、その「高速・大容量のコンピュータ」が、非常に高価なもので、そのお金を使えばもう一回アポロ計画ができる、などというものであれば、高すぎて誰も買わない。「高速・大容量のコンピュータ」は「安価」でなければ世の中に広まらないし、買う人も限られる。いま、それができる「安い・速い・大きい」という条件を満たすコンピュータができたので、私達にも「AI」が身近になった、ということだ。
【「AI」を体験する1万円のキットがある】
AIを体験するには、今や1万円ほどのキットを買って組み立てればできるようになった。あくまで一例だが、Googleが売っている「AIのキット」がある(Amazonのリンクです)。AIのソフトウエアも、カメラも入っているし、もちろんコンピュータも、学習済(大量のデータを覚えさせることを「学習」と言います)の処理済みのデータを入れたメモリーも入っている。このキットを組み立てて、電源を入れると(電源を入れ忘れると動かない←当たり前)、動き出す。動き出したら、カメラの前で微笑むと「笑い顔」を検知して、普段は青いLEDの色が赤く変わる。もともとがよほど変な顔をしていない限り(失礼)、ほとんどの人の「笑顔」を検知する。なお、知人に飼い猫の笑い顔を使って検知するかどうか試した人がいるそうだが、猫の抵抗にあって無理だったとのことだ。その人の飼い猫はいい迷惑であっただろうと想像する。なお、その実験の翌日に、彼は会社に顔に猫のひっかき傷を作って出社したのは、国家機密である。絶対に口外しないように。
このキットを入り口に、システムを改造し、より高機能にしたりすることもできる。このキットに詰まった全ての技術がインターネットで誰でも見られるようにしてあるからだ。つまりこれは「AIの体験キット」でもあるし「AIの実地での学習用のキット」でもあるのだ。
【「AI」は「愛」と読むから】
などと、システム開発には関係の無い方々に、余計なダジャレを言って本文の末尾を締めくくるつもりはないのだが、「AIの真実」と大上段に振りかぶった書き方はしたものの、飼い猫や飼い犬に無理を強いることだけは、やめていただきたい。お願いします。