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「オレは何でも知っている」。
【「オレは何でも知っている」若い人】
ここ10年くらいだろうか。もちろん全部ではないんだが、仕事で若い人と話をしていると「オレはなんでも知っている」みたいな優越感のある言動をする奴がいるんだな。
【実は知らなくても威張る】
本当に知っているのかと、こちらが質問して、専門用語も使って深掘りしていくと、実はネット情報だけで、実際には触ったことも無いのがすぐに露呈する。何も言えなくなるまで掘り下げて聴くと、今度は「実際には触ったことないんだから、知らなくて当たり前だ」と、居直る。そういう居直った自分が惨めにもならないらしい。
【「恥」が無い、という恥ずべき態度】
恥というものが無いんだなぁ。そこで頭を下げて、目の前にいる本当に知っている人に聞けば、もっと賢くなれるチャンスなのに、そういう自分の「成長」には興味がないんだな。
【自分が優位に立ちたい。けど実力がない】
要するに自分が他人を支配できるかどうかだけに関心が向いているので、支配できない他人が目の前に現れると、引き下がるだけで、自分の学びや成長はどうでもいいんだな。
【自分の若い時もあったよなぁ、と、遠い目】
目の前の「支配できるかどうか」と言う結果だけに興味があり、自分の成長には興味がないんだな。若い時には自分もそういうことあったよなぁ、と思い返すことしきりだが、自分の訓練を怠らずに積み上げて行った結果、ある時点で、そういう若者らしい未熟さは自分から消えていくものではある。
【「支配・被支配」は熟練で得られた芸が中心にある。AIは?】
実際のところ、これまでの時代の、人の支配・被支配の関係というのは、訓練して得る芸の熟達の度合いの序列でも、できている(他の要因もある)ものなので、支配関係の成立は多くは訓練の多寡に依ることが多い。だからこそ、訓練をすっ飛ばして、あるいは人間以上の非常に短い時間で芸を得てしまうAIが「人間と人間以外のもの」の支配関係を、ひっくり返すものとして恐れられてもいるんだな。
【偉い人はなぜ偉いのか?】
偉い人というのは、要するに長い人生の時間を使って努力して芸を身に着け、芸を持って社会の支配ヒエラルキーのピラミッドのより上位にいる人、と言い換えられるだろう。
【途中経過省略。結果しか見えない】
最初からその地位に座っているように見える人も、それまでの長い努力の結果であることが普通なんだが、現代は結果だけが求められ、過程が見えない社会なので、前述の若者が「マウントを取ればなんとかなる」と思うのは、仕方ないだろう。
【だからAIは人の社会を混乱させる】
そういう過程を通り越して、訓練無く芸を身に着け、ヒトの社会のこれまでの支配構造を破壊するAIの存在は、未熟な若者から見える「結果(だけ)」の世界を、若者と同じように指向している。
【訓練による芸なき社会が始まる】
無自覚に支配の構造のより上位にいたいと思う若者はやがて大人になることがこれまでの普通の人間だろうが、その若者もこの構造の中で生きていかざるを得ない以上、AIの支配の下に自らを置かざるを得なくなり、成長の機会を奪われ、惨めで未熟な若者のまま、一生を終わるかも知れない。これからは。
そうなったら、人類史は終わるだろう。新しい人類史は新人類であるAIにバトンタッチされるのかも知れない。
絶対にヒトの方が機械より良い結果を得られると言う社会的コンセンサスは消え去った。だから最後のところでAIは神になる。
「最後」って、なんの「最後」かって?
人類の最後だよ。