「会議で決めたことが進まない」から脱するために
「会議で決めたことが計画どおりに進まない」という現象は、多くの人が経験したことがあるだろう。
不測の事態なんて日常茶飯事だし、そういった壁をひとつひとつクリアしていく、トライアンドエラーを繰り返しながら進むのは当たり前だ。もちろん計画段階で読みの精度を上げることは重要だけれど、いきなり当たりを引くことは不可能に近いので、想定していたアウトプットを出したうえでの「進まない」はそこまで気にしなくていいと思っている。
一方で
「◯◯さんのアクションが期日までに終わっていない」
「△△さんのアウトプットの質が低い」
など、そもそも想定していたアウトプットが出ていないから進まない、という場合は気をつけたほうがいい。
これが無理なスケジューリングによる遅れや、個人の能力による低品質が要因であれば、それはそれで「読みの甘さ」を反省すればいい。
ではどういうケースで注意が必要になるのか。それは「実は◯◯さんは意思決定に納得していなくてモチベーションが低かった」「△△さんは他チームからのヘルプだから優先順位を下げていた」など、その意思決定に対するオーナーシップが低いときだ。
恥ずかしながら僕自身も経験があるのだが、「自身が出した意見では決まらなかったしやる気でないなあ」「気づいたら決まってたことに巻き込まれたから適当にやっちゃうかあ」と、意思決定に対してのオーナーシップが低く、アクションのスピードや質を落としてしまうことがあった。
前置きが長くなってしまったが、この記事では僕がマネジメントの師匠から教わり、普段の会議でも実践している「決めたことが進まない」から脱するための工夫を紹介する。
なぜ意思決定に対してオーナーシップが低くなるのか
対策云々の前に、まずは課題の根本であるオーナーシップの低下が起こる要因を整理してみる。
無理やり意思決定してしまう ≒ 会議のルールがない
自身の意見を表明できていない
択一のみで議論を進める
大きくはこの3点が要因になっていると考えているので、具体例も踏まえて詳しく説明していく。
そもそも会議にルールを定めているか
他社さんの話を聞いていて「意外と会議のルールを定めている会社さんは少ないんだな」と思うことがあった。
もちろん開始時間や終了時間、議題は決めているのだが、「どうやって議論を進めるのか」「なにをもって意思決定するのか」など、進め方や決め方のルールが決まっていないことが多い。
そうすると参加者目線では「なんだかよくわからないロジックで決まってしまった」「時間制限でリーダーの◯◯さんが決めてしまった」となり、意思決定にオーナーシップが持てなくなってしまう。
会議の主催者(意思決定者)からしたら「論理的に意思決定した」と思っていても、ルールが曖昧だと、同じ意思決定でも参加者に与える印象が大きく変わってしまうのだ。
そこで自社では下記のような会議のルールを設けている
特別なことではないので、同じようなやり方をしている人もいるだろうけど「明確にルールとして定め、宣言する」までやっている人は少ないのではないだろうか。
いきなりヘルメットとピコピコハンマーを渡されてジャンケンに負けたら叩かれる、こんなことされたら文句言うけど、事前に「たたいてかぶってジャンケンポン」のルールを聞いていれば本気で腹を立てる人はいない。同じようにあらかじめ会議のルール(議論の進め方、決め方など)を伝えるだけでも、意思決定に対するオーナーシップを上げられるのだ。
参加者 ≠ 傍観者、他人の意見に乗らない工夫
よく「会議でまったく発言しない人がいて無駄だ」という話は聞くが、「発言はしてるけど意見はしていない」ことや、他人の意見に乗っているだけの人がいることにまで目を向けているケースは少ないのではないだろうか。
このあたりの課題については「3. 全員が同時に意見する工夫」により対策をしている
* オンラインが多いのでスプレッドシートの同時編集機能を使用
*オフラインのときは紙に書いて同時にホワイトボードに貼るなど
この「同時に」というのが非常に重要で、同時にすることにより全員が意見できることはもちろん「他者の意見に流されない = 純粋な自分の意見を出すので議論プロセスにオーナーシップを持ちやすい」という効果もある。
発言を促すために指名はするけど、なかなか良い意見出ないと悩んでいる人は、ルールを説明したうえでぜひ「同時アウトプット」を試してみてほしい。
カレーうどんを選べるか
議論をしているとついつい「A案かB案の二者択一」のように、テーブルに並べられた選択肢から選ぼうとしてしまうことがある。
二者択一でも意思決定はできるが、A案が採用されるとB案の意見が取り入れられず、B側の意見を出した参加者からすると「自分の意見は採用されなかった、、」と意思決定のオーナーシップに懸念が残ってしまう。
見出しにもしているが「カレーが食べたい」「うどんが食べたい」と意見が分かれたときに、議論を経てカレーうどんを選ぶことが重要なのである(もしくはカレーうどんの選択肢も挙げたうえで三択から選ぶ)
もちろんすべての議論でこのようなアウフヘーベンを目指すことは難しいし、結果的に最初のA案とB案から意思決定することもある。しかし結果はどうあれ、議論のプロセスとしてC案を諦めないことを全員が意識すると、最終意思決定への納得感も醸成できる。
さいごに:会議(意思決定)は始まりにすぎない
改めて「会議で決めたことを進ませる」ためのポイントをまとめると、
持込みする人は複数案をメリット、デメリットとともに持ち込む
議論の制限時間と最終意思決定者をあらかじめ決めておく
全員が「同時に意見する」仕組みにする
択一ではなくアウフヘーベン = 止揚を目指す
決めたことには文句を言わず全員がオーナーシップを持つ
以上の5点。これさえあれば完璧とは言い切れないが、会議で悩んでいる人の助けになれば嬉しい。
さいごに、会議(議論)ではどうしても「正しい選択」をしようと四苦八苦してしまいがちだが、特にビジネスにおいては「正解を選ぶことはできないから、選んだものを正解にしようとすること」が最も重要だと考えている。
なので打率の高そうな選択肢を選ぶためだけでなく、「決めた選択を質高く進めるため」のプロセスとして、ここで紹介したポイントが役立つと信じている。
会議の目的は意思決定ではなく、事業を進ませること(その手法として戦略施策の意思決定をする)
意思決定は戦略施策の始まりにすぎず、決めたことをチーム一丸となってやりきることが大切
このことを忘れずにやっていきたい。