果樹農家はやっぱり大変なんだ(日経MJを読んで想うこと)
突然ですが、うちは本家が代々(と言っても明治以降だろうけど)りんご農家で、果樹農家の大変さはある程度分かっているつもりです。いや、つもりでした。今日はそういうお話です。
大ブドウ畑とワイナリー フジクレール、山梨に新設(2023/6/14日経MJ)
今回気になった記事はこちら。
えっと、創業60年の同社があの”フジッコのおまめさん”のフジッコワイナリーからフジクレールワイナリーに社名変更した件とか、官民一体でチャレンジしている好事例だとか、興味はたくさん湧いてくるのですが、今回記事を読んで、ううむ。と唸ってしまったのは、個人にしろ会社にしろ果樹農家って、大変過ぎるじゃないか...ということ。
このほど苗木400本を植え付け。で、収穫できるのは?
記事にはこうあります。「このほど苗木400本を植え付けた(中略)、収穫が見込める27年をめどにワインの試験醸造を始める」
私たち素人は、家庭菜園と同じイメージを持っているので「苗木を植えたら来年のブドウ楽しみだね(何なら、春植えたら秋に実がなるとすら思ってるかも)」と誤解しているわけです。
そんな感覚からすると「えっ?4年もかかるの?その間、どうするの?」と泡食っちゃうわけです。
農地はただ借りたり、買えばいいというものではない。
記事にはこうもあります。「圃場全域は27年までに造成と土壌改良を終え、28年に本格的な植樹を開始する」。
そうなんですよね。「今は農業やめる人多いから、土地いっぱいあるんでしょ?耕作放棄地ってよく言うじゃん」、これが私たち素人の感覚ですが、いったん荒れた土地は、耕し直して、少しずつ適した土地にしていく必要があるんですよね。
それが5年かかるわけです。「えっ?その間、この土地からは何も生まれないの!?」という驚愕の事実を知るわけです。
そしてワインができるまで。
そんでもって、記事にはこうあります。「醸造したワインが商品になるのは33年を予定している」。
絶句です...2023年に400本の苗木を植えて、ワインができるまで10年です。私、いいオッサンになってしまいます(でも、愛すべきオッサンでありたいと願う)。
トドメの気候変動。
山梨県北部の標高600メートルの高台をあえて選んだ理由。「気候変動で10年後にはさらに栽培適地になっている」。
これは、ぶどうに限らず、りんごも同じ。10年後、今の土地で、今と同じクオリティのりんごが採れる保証はどこにもない。ただ、ここまで時代を読み切る必要があるのか...ということと、今まさにその場所でその品種を育ててる果樹農家の人たちはどうする?問題が残る。え?この先、気候がどうなるか分からんのに、自分なりに予想を立てて「この品種が来るぞ」と少しずつ植え替えしなきゃいけないの?と。
自然災害を想う。
度重なる自然災害に、農業は本当に翻弄される。計画的にやっても(↑)10年かかるのに、一瞬でその計画が崩れ去る。TVで見かける、呆然と立ち尽くす農家の方の姿が目に浮かぶ。個人で頑張ろうと、会社組織で立ち向かおうと、自然の脅威は常にあるし、こんなにしょっちゅう災害があると、本当に気が気じゃない(あれ、ハウス栽培とか野菜工場はそうでもないの?)。
今日の記事は、ほんとは野心的なチャレンジをする前向きな内容なんだけど、なんだかこんなことを想ったのでした(おしまい)。