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#ショートショート 2025年1月28日
この小説は山根アキラさんの
青ブラ文学部
「放伐と禅杖」のお題の小説です
どうぞよよろしくおねがいします
ヘッダーは中国の故事ということで
studiomirro
さんの絵を使わせていただきました
部長夫人とその取巻きたち
友里は結婚をして
生まれ育った神戸から山口に住むことになった。
ちょうど家族用の社宅が古くなり
建て替え途中だったので
駅の近くのアパートに住んでいたが
3年後新しい家族用の社宅が建ったので
そこに移ることになった。
もともと神戸の北区に住んでいたので
山口の田舎ではおどろくことばかりだった。
大きな会社だったので
家族用の社宅は18棟もあり
これなら大丈夫だと少しほっとした。
それというのも同じアパートに
取り壊す前の
家族用社宅に住んでいた方がいて、
「社宅は部長をはじめ工場長さんなど取巻きの
権力の乱用による強制や嫌みや苛めがあり
わたしには絶対無理!!」
と言い捨てて、家を建て社宅には戻らなかったからだ。
聞いていたように
皇帝のような部長夫人とその取巻きがいた。
友里は関わるのも嫌だったので
娘を幼稚園にやるとすぐにパートに出た。
それからである
皆がよそよそしくなり
無視がはじまった。
しかし、上流意識の強い方々。
露骨ないじめはない。
挨拶をしても、声は出さない程度で、頭は下げる。
目は絶対合わさない。
そんなおり、
ある土曜日のことだ。
夫は休日当番だった。
娘と12棟の前で自転車の練習をしていると
部長と工場長の奥様が2人でやってきた。
だいたい本社採用のものは
山口に家を買うことはい。
地元採用の社員が家を買い、社宅から出て行くのだ。
「あら、山田さんの奥さんじゃないですか?」
「あっ、こんにちは」
友里はおそるおそる挨拶をした。
「お嬢さんのことだけどね、いらないこととは思うけど
私立の学校に通わすおつもりなら、パートなどやめて
そろそろお受験の準備をしないとねえ、山本さん!」
と女帝は工場長の奥さんの顔を見て
嫌みっぽく言った。
「はあ、でもいつ転勤になるかもしれないし」
と、友里は小さな声で言うと、
「えっ!山田さんは地元採用の方じゃなかったの?」
と、部長夫人すこし焦ったようだった。
「はい、うちは本社採用で、
夫の義母から山口では家を買うなと強く言われているので」
「そう、御出身はどちら?」
と、部長夫人は手をゆるめない。
「わたしは神戸で、夫は香川です」
部長夫人の顔が一瞬引きずったのを
友里は見逃さなかった。
「あら、そうだったの。それじゃあ入社式は東京で?」
「はい。そのように聞いておりますが」
「うちの主人は神戸大学工学部の大学院出身なんだけれど、
あなたの御主人は?どちらの大学なの?」
挑発的な物言いだった。
「あの、うちの夫は大阪大学工学部の大学院を出ております」
と、友里も挑発的に、目を合わせず言い放った。
バカバカしい!
世の中にはもっとすごい人がいくらでもいる
会社の体質が古いと、
社宅の中でも
いまだに学歴至上主義がはびこっている。
時代遅れにも程がある。
いや!不適切にも程がありすぎだ。
この会社運営人は東大文系出身者もいるが
地方の鋼炉に勤めるのは
国立大工学部出身者で良いという考えらしい。
地元採用者はたいがい高卒だ。
よくても地元の名もない大学出身なのだ。
それを本社採用の奥様方は下にみる。
友里もまた神戸の名もない大学を出たが、
夫に劣るところはあまりない。
しかし、
2人は何も言わず、踵を返した。
その背中が項垂れているように感じた。
そんな会話を交わしてから2年後
部長は定年になり子会社へ行き
工場長は中国に転勤になった。
そして夫は工場長となり
娘は公立の小学校に通っている
夫は大学まですべて公立にだったので、
公立で充分という強い思いがあるようだ。
そして今の部長夫人は
駅前のマンションの最上階に住み
いつのまにか友里は
社宅婦人会の最高位になっていた。
自治会のようなものはあるが、
集まるのは年に一度。
今も誰とも深く関わらず
あいさつ程度の関係で過ごしている。
友人はパートに行っている薬局の人や
子供の学校の気の合うママ友がいれば充分だ。
女帝は去り
社宅のだれにも公平に接する友里が
いつも静かに微笑んでいる
そうして以前より社宅の雰囲気が和やかになった。
こうしてどの婦人にも平和が訪れた。
1700字
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