株式投資に役立つ「決算書の読み方」。「損失」が出ているのに、会社が「よくなる」理由とは。
こんにちは、Noriです。
今回は、決算書で「マイナス」が出ていても、実は会社がよくなる可能性が出てきている場合の見方について解説しています。
個別銘柄における株式投資においても使える1ポイントアドバイスです。
実は決算書には見えていない「損失」が隠れている
売上高が伸びていると、自然と増えてくる「在庫」
コンサルとして現場にいるとわかることですが、決算書には見えない(正確にいうと見えにくい)損失が会社の中に、存在しています。
よくある例が「在庫」です。
売れ筋やすでに受注しているものを納品するまでに一時的に保管している在庫であれば、特に問題はありません。
しかしながら、この「在庫」がすでに売れなくなった「死筋商品」であれば、大問題です。
以前は売れていたので、勝負をかけて大量発注で仕入を行ったとたんに、実はピークを過ぎていて、売れなくなってしまうことはよくあります。
「たまごっち」でわかる大量の在庫を抱える怖さ
むかし、「たまごっち」というバンダイから発売されたキーチェーンタイプおもちゃは、社会現象になるほどの大ブームを引き起こしました。
入荷情報を聞きつけたファンが徹夜で店頭に並んだり、レアなものは数万円で取引されたり、ブームは爆発的な加熱を帯びていました。
このタイミングで勝負をかけたバンダイは大量入荷を行いました。
しかしながら、ブームに火が付いた約1年後には、その波は一気に沈静化しました。
それによって、バンダイは大量の在庫を抱えることになったのです。
結局、在庫を処分することで、1999年3月期には約60億円の特別損失を計上することになりました。
もし上場会社で消費者向け販売を行っている場合に、年間や四半期における「有価証券報告書」にて「棚卸在庫」が売上高に対して比較的大きな割合で増えている場合は要注意です。
その後、きちんと売れていなければ上記のように大きな損失につながる可能性があります。
あなたがもしその会社の株式を持っていて、その会社の在庫を多く抱えた場合は、「何の在庫なのか」、「本当に今後すぐに売れる見込みはあるのか」ということを検証しなければなりません。
ちなみに在庫がどれぐらいの期間で売れているかについては、決算書で簡単に検証する方法があります。
在庫が売れるまでの期間がわかる「棚卸資産回転期間」
それは「棚卸資産回転期間(月)」といい、数式は「棚卸資産÷(1か月分の売上高)」です。
もし「期間が長い=在庫が売上になるまでに時間がかかっている」と分かった場合、会社が仮にその在庫を損失に抱えてしまっても、経営に及ぼす影響は限定的になるかを見極める必要があります。
ここまで在庫の話をしましたが、読んでいるあなたからは「これから赤字になる兆候は見つけられたけど、会社がよくなる兆候は見当たらないぞ」とツッコまれそうです。
おっしゃる通りで、在庫を多く抱えた上に損が出てしまった瞬間、これからすぐに良くなる可能性は少ないです。
それでは他にどんな「損失」であれば、会社が良くなる可能性があるの言えるのでしょうか。
固定資産における特別損失は、その内容をよく確認してみる
固定資産を多く保有している「製造業」に着目してみる
固定資産というのは、継続的な使用などの目的で企業が長期間保有する資産のことです。
たとえば製造業でいえば、工場や機械などが固定資産に当たります。
もしあなたが会社の社長で、主要取引先の社長から『新商品を出すから、ぜひ部品工場の生産規模を拡大してほしい。すでに新商品については複数の顧客からまとまった受注が取れるように話ができてる。』といわれたとしましょう。
さらに、ウラを取った上で、どの話も本当だったとしましょう。
主要取引先の売上高に占める割合が7割と依存度も大きいので、失敗すればダメージは大きいものの、成功すれば大きな利益が見込めます。
これまで主要取引先の社長の手腕や先見の明にも助けられた経験もあって、この話に沿って新商品専用の最新型設備に投資します。
現在の売上高は約50億円、設備投資には10億円必要なことがわかっています。
手元資金では不足しているので足りない分は金融機関からの借入金で賄う必要があります。
そのため、今後は支払利息と借入金返済が負担として残ってきます。
それでも投資が成功すれば利益も増えて、そのような負担があってもおつりがくるのは目に見えています。
しかし、先のことがわからないのがこの世の中です。
タイミングが悪く、投資した直後に世界的な大不況が訪れてしまいました。
主要取引先の社長からは「うちも組立工場を増設するために準備をしていたが、残念だけどしばらくは新商品の話は延期にするよ。申し訳ないね。」と言われてしまいました。
すでに社運をかけた大型投資をした社長のあなたはどうするでしょうか。
投資で失敗した固定資産はしばらくはそのまま置いておくことが多い
いつ取引先が新商品の準備を再開するかわからないですし、かといって汎用的ではない専用設備であるため他に転用することもできません。
結局、そのまま工場の隅に置いておくことにしました。
幸い大不況は、3年程度で収束し、工場の1/6を占める専用設備は今も動いていませんが、レイアウトの見直しなどを図ったことで工場の生産性を落とすことなく、景気回復に伴って売上高や利益を回復させることができました。
それからさらに2年近く経ち、主要取引先との取引は継続しており、先方は業績好調で当社の業績も右肩上がりです。しかしながら、新商品の話はそれっきり出てきません。
それどころか好景気に伴い、主要取引先に対する既存の取引量が20%ほど増える可能性があることが営業担当者の調査でわかってきました。
その後、主要取引先の社長からは「うちに納めてもらってる商品なんだけど、来年はいつもより少し多めになりそうなんだけど大丈夫かな」と話がありました。
社長であるあなたはその話が来ることは見越していたため、工場のスペースを空けて、生産能力を確保できるように「専用設備」を1億円で海外に売却するルートを見つけていました。
売却はスムーズに進みましたが、その直後は主要取引先からの受注は思ったほど伸びずほぼ横ばいでした。
しかしながら、「専用設備があったスペースが使える」ことや「工場全体を効率的に使える抜本的なレイアウト変更や作業工程の見直し」ができたため、大量に抱えていた工場応援要員は半数で済むようになりました。
それだけでなく、専用設備を売却できたことで、「専用設備の減価償却費」「専用設備のメンテナンス費用」、「月に1回の空運転(設備が錆びないため)」と想像以上かかっていた費用が一気になくなったため、たくさんの利益を確保することができました。(XX14年/3月期)
このように固定資産はその投資が失敗した場合、さまざまな理由からすぐに廃棄や売却には至らず、一旦は様子見になることが多いです。
しかし、保有するにも影響が大きく、使えない場合はどこかの時点で見切りをつけるため、廃棄や売却によって「特別損失」が出てきます。
すると保有していた悪影響は毎年かかっていた費用にも表れているため、設備がなくなることだけでも翌年の利益がよくなることが多いです。
このようなケースが毎回当てはまるわけではないのですが、少なくとも「使えていなかった設備」がなくなり、売上高も現状維持が見込めるのであれば、利益は増加する可能性が高いです。
このように決算書の数字で「損失」が出ているからといって、この会社はダメだなと判断するのではなく、「どんな理由で損失が出ているか」や「なぜこの損失が発生することになったのか」などの背景を知ることで、違った解釈ができるようになります。
ぜひ上場会社の「特別損失」に注目して、「有価証券報告書」でその理由を確認してみましょう。思わぬ掘り出しモノ(個別銘柄)を見つけることがあるかもしれません。
私はこれを投資戦略の一つとして取り入れて、そこそこ儲かっています。
ちなみに株式投資にも使える「決算書の読み方」については動画にまとめているので、興味がある方はご覧ください。
https://www.udemy.com/course/financialstatements1/?referralCode=3DDC9513B6E0C7B3889C