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制約が自由を生む瞬間:育児とものづくりの中で見つけた可能性

ものづくりをしていると、いつも何かしらの「制約」に向き合うことになります。素材や技法の選択、時間や空間の制限。私自身も、これまでそうした枠の中で試行錯誤しながら作品を作ってきました。特に育児中は、自由になる時間も空間も限られ、その中で「できないこと」をどう解決するかが日常の課題になりました。でも、そんな制約がむしろ自由な発想を引き出してくれる瞬間があるんです。

ペーパーアートを始めたのも、まさにそうした制約の中からでした。子どもが小さい頃、まとまった時間を取るのは難しく、手軽に扱える素材を探していたんです。そこで見つけたのが「紙」でした。紙は、準備も片付けも簡単で、少しの時間で手を動かせます。もともとテキスタイルを学んでいたこともあり、布のように模様を重ねたり構成したりする感覚を生かして、紙で何か新しい形を作れないかと試してみることにしました。

布には柔らかさや動きがありますが、紙はその反対に硬さがあり、また異なる表現ができることに気づきました。たとえば、切り抜いた紙は、布では作り出せない独特の影を生みますし、光を透かしたときに現れる美しさにも大きな可能性を感じました。また、紙は重ねることで厚みが加わり、その層が陰影を作り出します。さらに、光の当たり方によって見え方が変化するのも、紙ならではの魅力です。布のように柔らかく自在に動かすことは難しい一方で、紙だからこそ固定された形や立体感を活かす工夫ができる。その特性が、新しいアイデアや発見につながったのです。

ただ、ここで言いたいのは、「自分にできる範囲で無理せず進めましょう」という話ではないんです。それももちろん大切なんですが、私が感じているのは、「できないこと」に向き合いながら、それを工夫して乗り越えることの面白さです。たとえば、「こんなものがあればいいのに」「あれがないからできない」と諦めるのではなく、自分が持っているものをどう組み合わせたり工夫したりするか。そのプロセスが、自分の中に新しい可能性を生み出してくれる気がするんです。

最初は制約がストレスに感じることもあります。でも、その中で工夫を重ねていくと、「こんなやり方があったんだ!」と発見があったり、予想外のアイデアに出会えたりします。それが楽しいんですよね。そして気づけば、自分の持つ世界が少し広がっている。そうやって制約の中で試行錯誤するうちに、自然と個性や自分らしさが生まれてくるように思います。

制約が自由を生む。この考え方は、ものづくりだけじゃなくて、日常や人生そのものにも通じていると思います。できないことに向き合い、それを工夫で乗り越えていく中で、自分にしかない表現や道が見えてくる。それが、私にとってのものづくりの楽しさであり、制約が持つ力なのかもしれません。

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