ふくしま旅日記① 祈りの信夫山
前回記事では、写真家江口敬さんの個展について書きましたが、きょうはその翌日、へとへとになりながらも楽しんだ福島市内の旅日記を綴ります。
福島へ行くと決めてからまずしたことは、福島るるぶを図書館で借りてくることでした。
そして、ざっと眺めて気付きました
福島市エリアの紙面の少なさに。
知りたい情報が、ほぼない!
どうやら福島市には、「福島市といえばコレ」といえるほどの観光の目玉はなさそう。さらに言えば、福島市民にとって「みどころ教えて」は恐怖の質問なのだとか。
でも、大丈夫。
そんななかでも楽しみをみつけるのが、つきふねの旅。
それに、そもそも一般的に人気とされるテーマパークや温泉にはあまり興味がありません。惹かれるところといえば、古くからある神社やお寺など、古のひとびとの祈りや思いが感じられるような場所。
そんなわたしにぴったりの観光スポットをみつけました。
信夫山
昔から山岳信仰の山として知られ、山頂には信仰の対象である神仏が祀られています。中心部の羽黒山の標高は260m、福島市の中心部にぽっこりと佇む小山です。
長野県民たるもの、「山」というワードだけではそうそう魅力を感じませんが、信仰の山でなおかつ羽黒神社があるというところに大いに惹かれました。
いつかは行きたい山形県の出羽三山。
その気配を福島でプチ体験できるなんて!よし、登ろう!
日頃の行いがいいのか?出かける先で晴れることが多いわたし。この日ももれなく晴れ予報。それはありがたいけれど、かなり暑くなりそうだったので、早めに宿を出て信夫山へ向かいました。
朝7時半
途中途中にある神社へお参りしながら、舗装されたゆるやかな坂を上ります。ときおり墓地の草刈りや掃除の人がいるくらいで、歩行人はわたしと50mほど前をゆくおじいちゃんくらい。
事前リサーチで、頂上の羽黒神社まではおよそ30分と聞いていました。
しょせん、標高260mでしょ?(←長野県民の驕り)
楽勝楽勝!
そう思っていたのですが・・・
舗装されているとはいえ、日頃歩きなれない勾配のきつい上り坂。あっという間に心拍数はMAX、体中から汗が吹き出します。
前方をゆくおじいちゃんを見ると、慣れた様子で休むことなく、一歩一歩確実に進んでいる。いつでも追いつけると思っていたのに、むしろ差を広げられているような・・・
ハードな上り坂に耐えて10分後、ようやく平地に出ました。
あ~、キツかった。
ちょっと休憩ついでに畑仕事に来ていた地元のおじちゃんと話をしたところ、気になるひとことが耳に残りました。
「あのねこ稲荷のあたりがキツイんだよね~」
え?ねこ稲荷?
なにやらカワイイ名前のお稲荷さんがいらっしゃるよう。
よし、休憩おわり!出発!
しかし、すぐに息があがる。
ここまでもつらかったけど、それ以上のキツさかも。
一瞬、「あきらめる」の五文字が頭に浮かびました。
いやいや、信州人のプライドとしてそれはできない。したくない。休み休みいけばなんとかなる!はず・・・
ウワサのねこ稲荷がありました。
しかし寄り道はしませんよ、そんな余力はないのです!
もうこれ以上足が上がらない・・・
と、そのとき、視界が開けて車道があらわれました。待ちに待った平地です。
とりあえず、道路脇の手すりにもたれ掛かって一休み。
あ、お堂の下にネコちゃん発見。
ネコちゃんに癒され、わずかながら気力復活。
ここから舗装なしの参道(というか山道)をゆっくりと上り、そしてようやく!頂上の羽黒神社に辿りつきました~
麓からここまで、寄り道+おしゃべり休憩タイムを含めて40分。
標準時間30分に対して10分オーバーは、わたしにしては上出来ではないでしょうか。
そしてこちらが、参拝の証拠写真です。
羽黒神社名物、長さ12mの大わらじ。
古来より健脚を願って毎年2月の「暁(あかつき)まいり」において奉納されているのだとか。
それにしても静かです。
いまここにいるのは、わたしだけ。
もはや拭いきれない汗をそのままに、サングラスを外し息を整えながら境内をぐるりと一周しました。
そして信夫山にきた一番の目的、
いにしえからの「祈り」の気配を感じたい
・・・
・・・
・・・
いちじるしく体力集中力を消耗していたため、よくわかりませんでした。
下るごとに少しずつ体力回復し、多少の余裕がでてくると、気持ちのよい風が吹いていることに気付きました。
森のなかは、まるで雨のようにツクツクボウシの声が降り注いでいます。
長野ではあまり聞くことがないツクツクボウシ、こんなにも一斉に鳴くものなんだ!はじめての体験に感動。
風が気持ちいいな~なんて上機嫌で歩いていましたが、下まで来てみるとやはり暑かった。
護国神社へお参りしてから、小さなお社の石段に腰を下ろしました。
背中が汗でしっとりしたリュックを脇に置き、首から外したばかりの手拭を広げて掛けます。
ずいぶん、汗かいたなぁ
なんだか小学校の遠足気分。
一つだけ残っていたチョコを口に含んでぼうっとする時間。
ふふ、楽しい。
桜の木陰で手拭が乾くまでのあいだ、そよそよと涼やかな風は絶えることがありませんでした。まるで、がんばって登ったごほうびのように。
それは確かに、秋の風でした。
ふくしま旅日記②へつづく