【ボイトレ・脳トレ・シニアライフ】第3話
N♠「さっき、すぐ前の公園を通りかかったら、食い過ぎBincoそっくりな胴体真ん丸人形が捨ててあったので、思わず拾って来たよ。何かの役に立たないかい?」
B♡「足も頭も取れてる人形なんて、枕くらいにしか使いようが無いわよ。」
N♠「ちょっと待て待て!今チカッとひらめいたぞ。糸の付いた針を人形のお尻から頭に向けて通し、お尻側の糸の端は大きめの糸球を作って、抜け落ちない様にしておこう。頭側から出た糸は、手で持って人形をぶら下げてみようか。」
B♡「このブランブラン状態は、ボイトレの基本原理が詰まっているような予感がするわね。」
N♠「さすが気が付いたな。糸にぶら下がった人形のように何も考えずにぶら下がれたら、ボイトレの出発点に立ったことになる。但し通した糸は、ボイトレでは息の糸(虚数)に変身する。しかも虚数糸は自分で作らなければいけないぞ。蜘蛛や蚕が自分で糸を吐き出すのと同じだから、しっかり真似ればいい。」
B♡「私、蜘蛛のように糸にぶら下がれるかしら。糸が切れそうだわ。」
N♠「ちなみに、極めて細い蜘蛛の糸をよじって出来る紐は針金よりも強い強度を持っている。将来、宇宙エレベーターのワイヤーとして研究対象だ。虚数糸も細ければ細い程、高性能となる。極限の細さを追求して欲しいな。当然、虚数糸が通過する人形の中心点は、自分で見つけるんだぞ。」
B♡「蜘蛛の巣って、そんなに強いんだ。そんな蜘蛛の糸なら、ハンカチに蜘蛛の巣模様を刺繍すると、売り物になるかもね。」
N♠「蜘蛛職人の、つむぎ糸も平面仕様だ。虚数糸製の息もボイトレ中は、左右の声帯肉片で挟まれた二次元平面となるよね。虚数糸は一次元の筋状だから、一次元を操作して二次元を紡ぎ出す工夫が必要となるよ。
B♡「蜘蛛は糸の平面網で狩りをするのよね。獲物かかる迄じっと見はってるのって、のんびり、うたた寝できそうもないわね。」
N♠「そんな心配はご無用。蜘蛛の糸は、微々たる獲物に振動反応する弦の役目をする。まさに、ボイトレその物だ。蜘蛛はその振動を体に感じて一目散に無賃飲食に出かける訳だ。
振動に敏感な体質は生まれつきだから、蜘蛛君はボイトレのインストラクターに向いているかもね。」
B♡「振動って今一解りにくいわ。カラオケのAi採点コメントで、「質の高い繊細なビブラート」という評価を貰った事あるけど、振動には色んな種類が有るらしいのよね。」
N♠「ほ~、結構解かってるね。それじゃ、蜘蛛の巣にかかった獲物で例えてみよう。
不意に蜘蛛の巣にかかった蝶々は、恐怖のあまり、羽ばたいて暴れまくり必死で逃げようとするよね。人間社会では、こんな場合、大声で「助けて~」って叫びまくるよね。これは誰でも出せる声だからボイトレの必要は無い。
一方、不覚にも蜘蛛の巣に絡まってしまったボイトレ熟練の蝶々なら、そっと息を潜め、羽をたたみ、周りのそよ風に全身を同期させて自然体に徹するだろうね。もしかしたらぼんやりしている蜘蛛君が気が付かないかもしれないよね。ボイトレとは、そのようにわずかな弦の振動に命を賭けて蜘蛛の巣から脱出する瀬戸際の行動に似ているかも知れないな。」
B♡「私だったら、蜘蛛君の仲間のふりして、おはよう!って挨拶してみるわ。返事がなかったら、蜘蛛君の嫌いなキィ~ン音で天敵だと思わせてやるわよ。」
N♠「おめえ、度胸あるなあ。俺だったら、蜘蛛より、どでかいカブトムシのふりして時間稼ぎしてみるかな~。少しは脱出のアディショナルタイム稼げるかもな。」
B♡「私、折角ボイトレやってるんだから、うっとりするような、心地よい、心ぬくもる、ビブラートで蜘蛛君を感動させる手もあるわね。蜘蛛君はきっと穏やかになって空腹に気が付かないかもよね。」
N♠「蜘蛛を感動させたら、人間を感動させるのチョロいぞ。その意気で楽しめ~。」
N♠「今回は、蜘蛛君のアドバイスに沿ってまとめてみよう。
蜘蛛の巣は、始点の一点から放射糸を作り始め、円周を補強して最後に同じ一点に戻ってきて終点となる。この円の中心点は円の支点となって、安定した二次元の平面円を作り上げる。この時、蜘蛛君は糸を変幻自在に吐き続けているぞ。ボイトレでも、蜘蛛君の様に、息を吐き続ける意識がとても重要だ。慣れてきたら吸う息は生存本能に委ねてしまえばいい。身体の中心点で吐く息の微調整に、意識を集中させてみよう。
蜘蛛の糸は、切れ目なく、息の流れる極めて細い通路となるよ。蜘蛛の糸の柔軟さも忘れないでね。最後に、虚数糸にぶら下がる実数筋肉も、リキミなく自然体でぶら下がって居られるように、脳トレ励んでいこう。」
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