プロジェクトの成功を左右するコミュニケーション:「アイスクリーム味のチャーハン問題」を解く
はじめに
プロジェクトが計画通りに進まない原因の多くは、コミュニケーションの問題に起因しています。本記事では、身近な例を用いてプロジェクトにおけるコミュニケーションの課題と、その解決方法について考察します。
「リンゴが欲しい」の真意を探る
「リンゴが欲しいから買ってきて」という簡単な依頼でさえ、実際のプロジェクトでは複雑な問題になり得ます。依頼者の真の意図を理解するためには、以下のような質問が必要です:
リンゴの種類(赤いリンゴ、青リンゴ)は?
必要な数量は?
産地の指定はあるか?
用途は何か(そのまま食べる、料理に使う、デッサンの題材など)?
予算や納期の制約は?
これらの質問を通じて、依頼者の本当の要望を明確にすることが重要です。時には、「リンゴ」という言葉の背後にある真の欲求(例:空腹を満たしたい、ビタミンCを摂取したいなど)を見出すことも必要です。
「アイスクリーム味のチャーハン問題」とは
プロジェクトの現場では、複数の要求が混在した矛盾する依頼がしばしば発生します。これを筆者は「アイスクリーム味のチャーハン問題」と呼んでいます。例えば:
「チャーハンください。味はアイスクリーム味で。卵アレルギー対応で。エビ風味あんかけチャーハンみたいな感じで。安く、綺麗に盛り付けてね!」
このような注文は、システム開発の現場でも同様に起こります:
「スマホとPC両対応のアプリで、情報量は同じ。直感的なUIで。クラウド使用。おすすめのベンダーで。」
これらの要求は、一見合理的に見えても、実際には矛盾を含んでいたり、実現が難しかったりします。
コミュニケーション・プロトコルの重要性
複雑な要求が含まれるプロジェクトを円滑に進めるためには、依頼する側と受ける側の間で共通の理解を促す「コミュニケーション・プロトコル」が必要です。これは、発言が以下のどの段階に該当するかを明確にすることです:
要望:プロジェクトを開始する根本的な動機
要求:正式に依頼する側と受ける側の間で明示される情報
要件:要求を満たすために必要な具体的な内容
仕様:製造するものに要求する詳細な規定
設計:仕上がりの形や構造を具体的に表現すること
効果的なコミュニケーションのために
要望を明確にする:「どう実現するか」ではなく「何をしたいか」に焦点を当てる
要求を明確に定義する:「当たり前」と思われることも明示的に伝える
要件定義の精度を高める:「何が欲しいか」と「どう作るか」の境界線を明確にする
仕様と要望の整合性を確認する:具体的な指定が全体の目的と矛盾していないか確認
設計段階での柔軟性を保つ:必要に応じて要件を見直す余地を残す
まとめ
プロジェクトの成功には、明確なコミュニケーションが不可欠です。「アイスクリーム味のチャーハン問題」を避けるためには、要望から設計までの各段階を整理し、互いの認識を合わせることが重要です。また、プロジェクトの進行中も常に本来の目的に立ち返り、必要に応じて軌道修正を行う柔軟性が求められます。
効果的なコミュニケーションを通じて、依頼する側と受ける側が協力し合い、創意工夫を楽しみながらプロジェクトを進めることができるでしょう。それこそが、真の意味でのプロジェクトの成功につながるのです。
参考:予定通り進まないプロジェクトの進め方 | 前田考歩, 後藤洋平 | プロジェクト管理 | Kindleストア | Amazon