人生の3大タスク:仕事、交友、愛
私たちは日々、様々な人間関係に囲まれて生きています。家族、友人、恋人、同僚...。これらの関係性は、時に私たちを支え、時に悩ませます。アドラー心理学では、こうした対人関係こそが人生の核心であると考えます。「すべての悩みは対人関係の悩みである」というアドラーの言葉は、この考えを端的に表しています。
では、なぜアドラーはそこまで対人関係を重視したのでしょうか?それは、人間が本質的に社会的な存在だからです。私たちは、他者との関わりの中でしか、真の「個人」にはなれないのです。
避けられない3つのタスク
アドラー心理学では、人生において避けて通れない3つの課題を「人生のタスク」と呼びます。それは「仕事のタスク」「交友のタスク」「愛のタスク」です。これらは、対人関係の距離と深さを表す「3つの絆」とも言われます。
仕事のタスク 仕事の世界では、必ず他者との協力が必要です。一見、個人で完結するように見える仕事でさえ、実は多くの人々の支えがあってこそ成り立っています。例えば、作家の仕事。物語を紡ぐのは作家自身ですが、その本が読者の手元に届くまでには、編集者、装丁家、印刷所、書店員など、多くの人々の努力が不可欠です。 しかし、仕事の関係は比較的ハードルが低いのが特徴です。なぜなら、共通の目標(成果)があるため、多少の個人的な不和があっても協力できるからです。また、就業時間が終われば他人に戻れるという境界線の明確さも、この関係を維持しやすくしています。
交友のタスク 仕事以外の友人関係は、より自由度が高い分、構築も維持も難しくなります。学校や職場という「場」がなければ、新しい友人を作るのは容易ではありません。しかし、真の友情とは数ではなく、その質にこそ価値があるのです。 一人でも深い信頼関係を築ける友人がいれば、それは人生の大きな財産となります。友人関係を築くには、自分から一歩踏み出す勇気が必要です。他者や状況が変わるのを待つのではなく、自分自身が変わることで、周囲との関係性も変化していくのです。
愛のタスク 愛のタスクは、恋愛関係と家族関係(特に親子関係)の2段階に分けられます。これは3つのタスクの中で最も難しいものです。なぜなら、最も距離が近く、関係性も深いからです。 恋愛関係では、相手を束縛せず、自由を尊重することが重要です。真の愛とは、お互いが自然体でいられる関係です。一方、親子関係は「頑強な鎖」のようなもの。簡単に断ち切ることはできません。だからこそ、逃げずに向き合うことが大切なのです。
人生のタスクに向き合うからこそ自立する
アドラー心理学では、人間の行動面と心理面のあり方について、明確な目標を掲げています。
行動面の目標:
自立すること
社会と調和して暮らせること
心理面の目標:
「私には能力がある」という意識
「人々は私の仲間である」という意識
他者との関わりの中でしか真の「個人」にはなれないことを踏まえると、健全な人間関係を築けてこそ真の自立が可能になると言えます。つまり、こうしたありたい姿に近づくためには「人生のタスク」と向き合うことがとても重要です。
人生のタスクから逃げないために
人生のタスクに向き合うのは、決して容易なことではありません。しかし、逃げてはいけません。前述の通り、これらのタスクこそが、私たちを成長させ、人生を豊かにする機会だからです。
例えば、引きこもりやニートの問題。これは単に「働きたくない」という問題ではなく、実は「仕事にまつわる対人関係」を避けたいがための現象かもしれません。就職活動での挫折や、仕事での失敗経験が、自尊心を深く傷つけてしまった結果かもしれないのです。
しかし、ここで立ち止まってはいけません。たとえ困難に思える関係であっても、まずは向き合うことが大切です。そして、自分自身を変えていく勇気を持つのです。
人生は競争ではない
アドラー心理学の重要な教えの一つに、「人生は競争ではない」というものがあります。私たちは他者と比較し、競争する必要はありません。大切なのは、自分自身の成長と、他者との協調です。
他者を「敵」ではなく「仲間」と見なすこと。そして、自分には能力があると信じること。これらの意識を持つことで、私たちは人生のタスクに勇気を持って向き合えるのです。
人生のタスクは、決して簡単ではありません。しかし、これらのタスクこそが、私たちを真の「個人」へと成長させる機会なのです。逃げずに向き合い、一歩ずつ前に進んでいく。そうすることで、私たちは自立と協調の調和を実現し、より豊かな人生を歩むことができるでしょう。
あなたの人生のタスク、どう向き合いますか?
今日から、小さな一歩を踏み出してみませんか?
参考: