CSMは営業か否か?
最近スタートアップ企業の経営陣と話をしていると、 カスタマーサクセスとCSMの話題がとかく多い。クラウドでサブスクリプション型のビジネスをやっているとNRRとGRRの話を避けて通れず、その中心人物となるCSMとカスタマーサクセスについては必然と大きな関心事となる。
CSMに関する疑問
多くの場合、以下の3つがメジャーな論点となる。
CSMのミッションと設定すべきKPIについて
ビジネスのボリュームに対してCSMのヘッドカウントの割合設定
CSMとしてどのような人を採用したらよいのか?
そして、これらの議論と並行して必ず話題になるのは、
「CSMは営業組織なのか? 否か?」
ということである。
その際に、私がいつも投げかけているのは、
そもそもカスタマーサクセスという仕事をカスタマーサクセスマネジャーの仕事として定義したいのか?
それともカスタマーサクセスを組織全体でやる仕事として定義したいのか?
ということである。
カスタマーサクセスは組織全体のミッション
なぜ上記のような質問をなげかけるかと言えば、多くの企業は
「CSM = カスタマーが直面する課題をなんでも一人でさばいて、顧客を成功に導く超人」
という、イメージ先行型の発想で、CSMが本来は組織全体で顧客に提供しなければならないカスタマーサクセスというタスクを、あたかも一つの職種で実施されなければならないという、幻想にぶち当たっているからである。
「カスタマーサクセスは組織全体で達成すべきミッションである」という視点が欠落すると、この現象は顕著に発生する傾向にある。
重要なので繰り返し言うが、カスタマーサクセスは、組織全体のミッションでなのであり誰か一人の仕事ではない。
CSMに必要なスキルは問題解決能力
では原点に立ち戻り、CSMはどういうことをする人かというと、カスタマーサクセスの概念を広めたGainsight社では、Essential Guide to Customer Success ManagementにおいてCSMのミッションは以下のように定義している。
つまり「複数あるカスタマーサクセスの役割を管理する人間」がCSMであり、ここから考えられる大事な能力は「問題解決能力を有する」こと、「実現するコミュニケーション能力」なのである。
カスタマーサクセスは営業ではない
「CSMは営業ではない」。
今のスタートアップ、ひいては日本のクラウドサービス企業が勘違いしているが、「CSMは営業ではない」。
また「CSMは営業だと思っている」人はぜひAccount Managerという職種を調べてみてはどうだろうか。多くの人がいっている「CSM=営業」の像は、Account Managerのような動きをしている人をみて感じるのだろう。
参考までにHubspot社がわかりやすくまとめている資料があるので掲載しておく。
Customer Success vs. Account Management — How Do They Differ?
一方で、カスタマーサクセスの分業が必要な時期に差し掛かっているのも事実である。CSMが営業だと感じる人が多くなるほど、CSMがリードすべき仕事は多様を極めており、結果としてCSMがフォーカスする部分が顧客とのコミュニケーションによると、広義の意味での営業だと認識してしまう人も多くなってくる。
そのため規模が大きくなるに連れて、カスタマーサクセスのタスクは分業によってなされることが理想である。なぜならサービスが使われれば使われるほど、カスタマーサクセスのタスクの業務によりユーザ側のビジネス理解が求められ、複雑化するテクノロジーの活用方法促進も大事になってくる。これを一人に人間と他部門のサポーターで実現することは不可能だからである。
スタートアップの創業期や成長初期では人員を割けないなどの理由もあるので、部門をまたがった全員野球で顧客のカスタマーサクセスをサポートするをなんだかんだで効率が良いのも事実である。
しかし、スタートアップが成長中期にさしかかり、組織規模も大きくなり、経営としてはよりGRRとNRRにフォーカスを当てなくてはならなくなった際は、図の一番右側のように、カスタマーサクセス部門に役割に応じた人員を配置していくようにすることで、更にリソースの効率性を高めることができるだろう。
そして各自がそれぞれの専門分野でのスキルをあげることで、それぞれの生産性を上げていくこと、そして顧客のよく直面する課題への迅速な支援をできる体制を構築できていけると考えている。
注: 図はカスタマーサクセスマネジャーが複雑な顧客要件に一人で奮闘する絵をAIが作成したものです 笑