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あれから20年な旅のおもひで

自分はなんでもできるような気持ちで生きていた頃

10代最後に「そうだ、京都へ行こう」と思い立ち

アルバイト先にもっともらしい適当な嘘をついて約2週間の空白を作った

とはいってもお金はあまり持っていない

京都までは仙台から夜行バスを選んだ

仙台までは高速バスでなんとかなったんだ

2年生まではちゃんと行ってた高校の修学旅行は京都・奈良・広島

ゆっくりまわれるほど自由度は高くなかったから

そういえばやたらお寺いっぱいあったよなぁ

じゃじゃじゃ、じゃあさ、すべての寺を巡ろうじゃないかと企てた

写ルンですを小脇に抱えてね、ひとつも自分が写らないのに

最終日は大文字焼きが見える日程だったから

真夏もいいとこ、とんでもない暑さで東北民を焼きコロしにかかってると思った

誰だ川床が涼しいなんて言いやがったのは、湿度高くて窒息しそうだ

宿泊先に選んだのは外国人旅行客がたくさんいる男女混合ドミトリーゲストハウス

当時インターネットも今のようにはちゃんとしてなかったと思う

英語もロクに使えない10代女子は何となく気味悪さを感じてしまった

その宿が悪いわけではない、当時の無知な自分が悪い

得体の知れない恐怖心でその場で急遽予定が変わったと言ってキャンセルをした

そこから安い旅館を探すのに一苦労したよね、だって夏休みの繁忙期だ

飛び込みで聞きまわり小さい部屋だけどいいよと言われて

冷房が効いた和の個室に通された時には生き返ったような気分だった

錦市場の近くだったから朝晩の食事は調達できた

といってもすでに錦市場は観光客向け、値段は決して安いわけではなかったので

そのへんの人に聞いて安いお店を教えてもらって足をのばした

どういうルートでどの寺をどう巡ったかはさっぱり記憶にないわけで

移動手段はそのへんの人にお願いして安く譲ってもらった中古の自転車だった

2000円渡したら自転車と飴くれたいいお爺ちゃんだったな

そこで暑さのあまり熱中症になりかけて記憶が飛び飛びなんだよなぁ

なんの苦行だろうと途中何回も投げ出したくなった

だってお寺なんてどれも景色同じだからね…

嵐山の愛宕念仏寺の写真だけたくさんあるんだよなぁなんでだろう、いまだに謎…

鞍馬山はもう登山だよね、知らずに歩き始めて2時間かかってTシャツびっしょびしょ

途中スズメバチ2匹に追いかけられてただでさえきつい山道を走るはめになった

天狗に遊ばれてんのか、あたしゃ牛若丸か!!

でも確かにこりゃ天狗がいそうな山だなと思いながらスズメバチから逃げる

本当に誰ともすれ違わないから別次元に迷い込んだかと思ったよ

比叡山延暦寺だけはツアーバスか何かで行った

深い霧に包まれた日だったからやけに幻想的に見えたんだよね

隣に座った婆さんがずっと話しかけてきたのに負けじと窓からの景色を楽しんだ

1000年以上の歴史があって数百年前にはここではあんなことやこんなことがあったんだよねぇなんて

生で見たいものじゃないか、自分が専門で勉強しようとしているものに深く関わるものだから

ゆく先々で「ほう、これがあの〇〇で〇〇があったという〇〇か」と独り言

そうだせっかくだから神社にも寄って行かないとねと思って色々立ち寄ってはみたけど

まぁこんなもんだよねぇなんて言いながら

あぁそうだ母が伏見のお酒が好きだから仏壇に供えてやろうと思って行った先に

立派な伏見稲荷大社があったんだよ、あぁあの鳥居いっぱいあるとこねぇなんて

これまた知らずに登り始めたらとんでもないわけで…2時間かかってTシャツぐっしょぐしょ

あたしゃ何しに来たんだろうかとそろそろ限界に達したところで

ちょっとした出会いがあったのだけど…まぁそれは次回にしよう

散々歩き倒したし、なんならマラソン級に走ったし、心臓破りのチャリ漕ぎもあったけど

不思議と筋肉痛にはならないし、毎晩宿に帰って風呂に入って熟睡できた

鞍馬山あたりで自分は牛若丸だと思って旅してきた、若かったんだよね

シャイな東北民だけど、西の言葉を扱う相手にガンガン話しかけてお得な思いもたくさんした

大文字焼きを眺めながら川床で食事したいと思ったけど一人で入れるところなんてあるわけがない

どうしようどうしようとウロウロしていたら

とても上品なご婦人がひとり同じようにキョロキョロしていた

思い切って声をかけたら「あら、わたしも一人で入れるお店を探しているのよ」なんてにっこり

鴨川の上、端っこの席に通してもらって鮎や鱧、湯葉なんか入った上品な箱がきた

びっくりするくらいお金取られたけど満足

帰りの切符だけあればいいからって残り数百円

80代だというご婦人は凛とした女性で、それじゃいくらなんでも怖いわよと言って五千円札をくれた

お返ししますから5年後の大文字焼きでここで待ち合わせましょう?と言ったら

そこまで生きてないから遠慮するわ、と明るく笑ったご婦人が懐かしい

あのご婦人のおかげで翌日空腹に苦しむことはなく夜行バスに乗車できた

「THE東北の顔」というだけで謎に可愛がられたし、東北訛りが出ると大いに喜ばれた

そのへんの人に声をかけると「あれ?あんた東北の子やね?」と高確率で食いついてくる

「寒い国からきはって~」とかって、たぶんこれ京都ならではの…??(笑) 国ってなんだ、国って!

2週間という長い期間を旅先で過ごすなんてことはきっともうないだろうって

帰りの夜行バスでかなり満ち足りた気持ちだったことを覚えている

いや全体を通してかなりの苦行だったといえるけども…あれからもう20年も経つのかね…

今だと険しい道のりなんかまっぴらごめん、4Kテレビの前に座って映像で楽しみます

でも、旅はしたほうがいいよね

いろんな意味で自由に体が動くうちにというお話

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