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読んでない本の書評50「犬神家の一族」
216グラム。またクリスマスイブにあたらしいドラマ化作品の放送があるらしい。この言葉を使うのは本当に苦手ではあるが、以下は一応どネタバレである。
私が犬神家の一族に最初に出会ったのは縁日のお化け屋敷である。真っ白で不気味なマスクが入口付近に展示されていて恐ろしかった。そのときは単に手を抜いたお化けなのかとおもっていたが後に「犬神家の一族」を映画で見て、ルーツはスケキヨさんだったんだな、知る。みんななんといってもスケキヨさんが好きなのだ。
登場の仕方からインパクトがあるわりには結構オドオドしているし、犯行の動機が「ひとつ嘘をついたら次々とつきつづける羽目になった」みたいな頼りないものだし、母子のきずなが強いわりには暴走する母の扱い方が不慣れ過ぎておもしろい。なんとなく中身がうつろな感じのまま顔と名前と最期のインパクトで小説全体を横切って消えていく。本当に幽霊みたいな感じの人だ。
一代で財を成した大金持ちのおじいちゃんが遺産争いに嫌気がさして「全員欲と憎しみで食い合って途絶えてしまえ」という旨の乱暴な遺言を残して死んでいく。雑なちゃぶ台返しの結果、残ったのは美人で無垢な珠世だった。でも他の血縁者はいないし、珠世の結婚約束も少し血が濃すぎるところがあり犬神家の存続も長くはないのではないか、という予感が残るあたりは横溝正史らしい。
とはいえ読んでみるまで案外結末がどうなったのかの印象は薄かった。小説でも映画でも、やっぱり何よりもスケキヨさんのインパクトの話である。