北京入院物語(17)
前項の補足をしておきます。
治療法というのは大切な財産であり、効果が立証されたものです。
しかし、その人の独創性(力)が、治療結果を大きく左右するということです。
月曜日の朝、初めにやってきたのは、孟子(もうし)の孟という名前の女の先生です
私はさっそくどう発音するのか尋ね、マンとモンの中間あたりの発音であることを覚えました。
異文化を吸収すること、なかでも言葉を覚えることはドキドキするぐらい楽しいことでした。
国際医療部の先生は英語と日本語のできる先生が多かったのですが、この先生もある程度日本語ができました。
この先生は中国式の按摩(あんま)と針治療が専門でしたが、按摩を受けてまず気がついたことは、揉(も)んでいるのではなく、触っている程度の力の入れ具合だったということです。
中国式按摩(あんま)がいかなるものか知りませんが、このやり方は、万国共通に「手抜き」と呼ばれるものです。
どうもこの先生は、性善説を唱えた孟子の子孫とは思えません。
それでいて20分ほどで100元(1500円)しました。
日本では1万円札が最高額の紙幣ですが、この中国では100元札が最高額の紙幣です。
大ざっぱに言って100元札は1万円札と同じ程度の値打ちです。
私はマッサージを受けながら、今後孟先生の按摩をどうするか、天秤のように揺れていました。
北京入院物語(18)