北京入院物語(96)
9月7日に単身北京にやってきて、3ヶ月の期限切れの直前、1ヶ月ビザの延長許可をもらったと思ったら、その1ヶ月もあっという間になくなり、とうとう帰国することになりました。
考えてみれば、万里の頂上にも登り、西安にも出かけ、広州にも出かけました。
毎日、北京市内にも出かけ、さんざんに遊びました。
私はこれでもう中国に来る必要はなかったのかもしれません。
ところが、体に異変が起こり、長く筋萎縮を続けていたのに、なんだか回復してきそうな気配です。
西安から帰ってからは、空き時間を利用して、病室内で自主的にリハビリを始めるようになりました。
そうなると・・・次はいつこようかなぁということになってしまいました。
北京で思い切り遊びたいばっかり病院に入院した私は、思いもかけず体がよくなったことで再度北京に来ることを考えるようになりました。
『犬も歩けば棒にあたる』ということわざがあります。
このことわざの意味はいろいろありますが、物事をしようとしている者はまた、思いがけない幸運にあうことのたとえとも言われています。
いかなる難病といえども、希望がないわけではありません。
希望がないと決めているのは他ならない自分です。
『外』に出るからこそ、いろいろと思いがけないことが起こります。
悶々としている人の欠点は、比較的狭い自分の殻の中に解決法や希望を見出そうとすることです。
自分の『外』には知らない世界が常に広がっているものです。
帰国の日、小雨の中を飛び立ったボーイング747はグングン高度を上げ、雨雲を突き抜けると一気に真っ青な空が広がる雲海の上に飛び出ました。
わずかに機体が傾くと、窓には雲ひとつない青々とした空とお日様がのぞきました。
「ほんとうにいい天気ね」というスチュワーデスの声に、私もにっこり微笑んでうなずきました。
(終わり)