北京入院物語(27)
この時期、入院して2週間しかたっていませんでしたが、なにぶん周さんと13時間います。
さらに午後からは喫茶店でお嬢さん相手に中国語の勉強をしています。
寝るまでベッドの横にあるテレビで中国の放送を見ています。
いつの間にか、そこそこ中国語を話すようになっていて、時に冗談で人をわらかす程度になりました。
八達嶺長城に向かう車の中は中国語だけが飛び交っていましたが、私も時に少し仲間に入りました。
万里の長城は世界最大のバリアーだと書きましたが、そう大げさな表現でもありません。
登り口にいきなり5、6段の段差がありますが、建築確認もとれそうもないほどの急な階段です。
しばらく通路が平坦でほっとしているとまた数段の階段があります。
この繰り返しが5回位すると、やっと見張り台まで続く急な登り坂になります。
階段の途中で、外国人のおじさんが疲れて座り込んでいました。
実は私たちが登ったのは通称「女坂」と呼ばれる比較的緩やかな坂です。
一方この女坂の反対側は「男坂」と呼ばれ・・・きっとすごいのだろうと思います。
この「女坂」の最後の急勾配は石畳ですので、雨の日はきっとそうとう危険な状態になります。
とにかく、やたら座り込んでいる人を見かけました。
「女坂」もなかなか強敵です。
中国には長城に登らないと男にあらず(不到長城非好漢)ということわざがあるそうで、叶琳を含め4人が私を男にするために、車椅子をドンドン押し上げてくれますが、途中から体は後ろにそり始め、少し寒気がし始めました。
もう十分に男になったと思っているのですが、4人は力の限り上へ上へ押してくれます。
だんだん急勾配になり、「おいおい!」と不安なものを感じてきました。
もう男の中の男といってもいいくらいです。
そこで男らしく
「もうかんべんして!」
とお願いすると、やっと止めてくれました。
しかし普通に車椅子をロックした程度では下にずり落ちます。
坂に対し横向けの状態で全員で記念写真をしました。
当時45歳に成り立てでしたが、連日遊び回り、喫茶店の20歳のお嬢さんと楽しくお話をしています。
もう楽しくて楽しくてたまらないと言う顔に、男に成り立ての顔が足し算されています。
北京入院物語(28)
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