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北京ドタバタ旅行(40)


 このタクシーには、おそれをなしたのかガイドが乗り込んできません。両親とガイドはもう1台の車で後を付いてきます。きっとこの3分刈りのお兄さんもかわいい恋人の前では、優しいのだろうとなんとか思い直し、少々不愉快な気持ちを紛らわせていましたが、中国人の国民性を知る以上に、このお兄さんの人柄を知ることになりました。

 とにかくこのお兄さんの運転は乱暴なのです。中国人の名誉のために言っておきますが、けっしてこのお兄さんが中国人の代表ではありません。今日はやや日が悪かったのか、やや威勢が良すぎるお兄さんがSOGO百貨店の前で客待ちをしていたに過ぎないのです。

 お兄さんは狭い道を猛烈なスピードで飛ばします。
中国では正面の信号と無関係に常時右折可ですから、交差点ではこの右折してくる車がいることを頭に入れておかないと行けませんが、何分小学校の算数の授業中寝ていたかも知れないこの若いお兄さんの頭には、どうもこの車のことが頭になさそうです。

 信号でもブレーキを踏むのは主義に反するとばかり、スピードを緩めません。対向車線の車が左折して、私たちの車に近づいてきました。どちらかがスピードを緩めないとぶつかります。

 私はアメリカ映画でジェームス.ディーンが主演した「理由なき反抗」の中のチキンレースのことが不意に頭に浮かびました。チキンレースというのは崖に向かって2台の車を走らせ、先にブレーキをかけた方がチキン(臆病者)というレースなのですが、このお兄さんがジェームス.ディーンを知っているかは知りませんが、チキンレースをしているのは間違いありませんでした。

 運のいいことに対向車がチキン(臆病者)であったお陰で私はこの事が書けると言うべきでしょう。対向車線も算数の授業中に寝ているような3分刈りのお兄さんであったなら・・・。

 そういえばこの北京に置いても、一般的に中国に置いても、あまり道を譲るという感覚がありません。威勢のいいほうが勝つという世界です。道路上で勝つとか負けるというのは不適切な表現みたいですが、自転車であれ、歩行者であれ、気迫のある方が道を征するようです。

 そういうふうにチキンレースに勝ち、この若いお兄さんは私を車椅子に乗せ代えると、じつにさっさと走り去りました。悔しいことに後続のタクシーは同じ距離を走ったのにも関わらず、わずか17元(220円)でした。まぁ3倍近く取られたと言うことになります。しかしジェットコースター以上のスリルを味わって600円といのはやはりお買い得と言うべきかも知れません。

北京ドタバタ旅行(41)



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