憧憬
伝説がぼくを呼んでいる
それが撒餌ではなく毒だってぼくにはわかる
しいて言うならもう戻ってこないもの
おさなくあどけない心がとにかくとどまろうとする所
もう少し ぼくから離れてくれないか
あたたかい海の水が 君にもかかってしまうだろう
古いにおいの立ちこめた倉庫の壁から壁をこえて
ぼくをめがけて突き進み
あたまから一気にのみこんで
そうしてやさしくほほえんで
はるか遠くの宙の屋根にまで運んでくれるから
通りすがる雑魚の尾がたがいに当たって
ぎらぎら ぎらぎら 音を立ててうるさい
でもなんだか ゆたかでしあわせな気もするよ
用はすんだかな
交合もすんだかな
ぼくは いたって冷静です
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