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【レポート】テレビノーク#8(スペシャル!!)

月に一度、カロクリサイクルのおしゃべりの時間としてお届けしている「テレビノーク」。今月は3月11日(土)に生配信をお届けしました。
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東日本大震災から12年。十三回忌の年でもあり、公に集まって過ごせなかったコロナ禍のここ数年ともまたちがった様子の2023年。集う場を準備する忙しい3月が東北には戻ってきていました。
街中に献花や祈りの場があると、自分でもどこかしらで立ち止まる時間がつくれる。時間が経ってようやく触れられたり実感できたりすることがありつつも、被災した土地からやや離れた地域にいると、改めて場や時間を持つのって難しいよなあとも感じます。
そんなわけで今回は「3月11日をどう過ごしてますか?」を軸として、各地にお電話を繋ぎ、手記の朗読や音楽を聞き、スタジオでおしゃべりし、さまざまな声が重なる時間をつくりました。
東京からの発信で、3月11日を過ごす場のひとつになれていたら嬉しいです。
大事な日にご協力いただきました皆さま、本当にありがとうございます!

今回は小森さんと佐竹もStudio302に来ました!

テレビノークスペシャル!! 

配信拠点の3331アーツ千代田room302では展覧会「カロクリサイクル 記録から表現をつくる」の最終日。人の行き来があってにぎやかな空間での生配信でした。
案の定準備でバタバタしつつも、2時46分をお知らせする館内アナウンスが流れ、静かな気持ちで黙祷の時間を迎えました。
そして3時を回り、配信スタート。
怒涛の旅、旅、旅。
気づけば4時間半を越えていました……!

テレビノークスペシャル!!お品書き

<part1/石巻編>
◆10年目の手記
はっぱとおつきさま「2011年3月12日から現在(いま)へ」
朗読:原田つむぎ(東京デスロック/ヌトミック)
◆電話出演:清水葉月さん

<part2/陸前高田編>
◆10年目の手記
H.A.「空に聞く」
朗読:村岡佳奈(屋根裏ハイツ)

◆お手紙 H.A.さん
◆映像:「3月11日、どう過ごしていますか?」小野文浩さんより
◆音楽:友部正人/陸前高田のアベマリア

<part3/仙台荒浜編>
◆みなさんからのお便り/「3月11日、どう過ごしていますか?」
◆映像:「3月11日、どう過ごしていますか?」海辺の図書館さんより
◆音楽:Nami Sato /pray, Twillight

<part4/トルコ・シリア編>
◆電話出演:斎藤亮平さん(JIM-Net)/シリアについて
◆電話出演:井藤聖子さん/トルコについて
◆音楽:小磯/眺めている日々

<part5/スタジオゲスト編>
◆スタジオゲスト:飯倉義之さん(口承文芸学、民俗学)
◆民話
瀬尾夏美「やまのおおじゃくぬけ」
朗読:坂井遥香

<part6/富岡編>
◆電話出演:秋元菜々美さん

<part7/岡山編>
◆10年目の手記
秦 岳志「東京から疎開して」
朗読:林ちゑ(青年団)

◆電話出演:はっとりいくよ さん(一般社団法人ほっと岡山)

<エンディング>
◆音楽:カンザスシティバンド/新しい町

このように大ボリュームのため、気になるパートに飛んでちょっとずつ聞き進めていただけたらなと。
全体を通して振り返ってみると、これまでの歩みや当日を語る皆さんの声が、どの地域でもとても自然体だったのが印象的でした。12年分の歳月が経った今どんなことが生まれているかを丁寧に拾いながらそれを日常の中で語れる、それぞれの地に足のついた営みを重ねてお聞きすることのできた1日でした。
各パートをちょこっとご紹介すると、

石巻 南浜の当日のようす

石巻編のゲストは若い世代の語りをサポートしている清水さん。この日も、以前から関わりのある子の語りはじめに立ち会った直後にご出演いただきました。

陸前高田の14時46分 海に向かって祈る人びと   撮影:小野文浩さん

陸前高田編は、「10年目の手記」作者のH.A.さんからのお手紙を読ませてもらい、届いたばかりの黙祷の風景の映像を一緒に眺める時間。

仙台荒浜の風船リリース「Hope for project」  撮影:海辺の図書館さん

仙台荒浜編では、震災後継続して居場所づくりを続けているチームからたくさん動画が届きました!

シリアの風景も交えて現状をお話しくださったJIM-Net斎藤さん

2月に起きたトルコ・シリアの現状を、それぞれの地域に詳しい斎藤さん、井藤さんにお聞きするパートも設けました。

富岡編の頃にはすっかり日も暮れ……

スタジオゲストとのトークを挟み、富岡編。出演してくださった秋元さんに今日一日の過ごし方を伺いつつ、これから富岡でやりたいあれこれをお聞きしました。

「ほっと岡山」にて。夜もパワフルなお声を聞けました!

ラスト岡山編では、広域避難をしている人びととの居場所づくりについて。手探りの実践を重ねるはっとりさんから「まずはあり続けること」という言葉も出て、他の災禍や困難とも連動して考えていきたいお話しがぎゅっと詰まってました。
(「ほっと岡山」クラウドファンディング達成、おめでとうございます!)

飯倉義之さんとのスタジオトーク

こうして、災禍を中心に据えつつ、声によってさまざまな土地を繋いでいた#8のテレビノーク。
スタジオゲスト編では、その声や語らいの営み、民話が、どのような役割や意味を持って今に続いてきたのか?というお話を、民俗学・伝承文芸学の研究者である飯倉義之さんに解説していただきました。

今回話題に出ていたキーワードの一部👇

・民俗学が震災直後と向き合ってきたこと 
 ー芸能、祭礼、語りによる記録

・被災地域で発災直後からあった“語りの集い”で生まれていたこと

・石碑と口碑
 ー語らない「もの」の傍らに、物語や意味の伝承が必要となる

・災禍を記録する行為と民話の親和性

・時間が経過する中で出てきた語り

・語りと共同体
 ー話すことは自分の体験と少し距離をもつこと、相手や語らう仲間と分けて持つこと

・民話や語る行為がコミュニティの中で担ってきた役割

・語りと身体性 ー肉声は皮膚にくる

御伽噺の「伽(とぎ)」は、そばにいること

実にさまざまなキーワードが飛び交う中で、「伽」と「群れの文芸」についてのお話しがとても興味深かったです。
”産の伽、通夜の伽“という言葉があって、お産の後に産婦を寝かせないよう、傍らで先輩の女性たちが入れ替わり立ち替わり話をする。通夜の伽はというと、亡くなった人の傍らにずっといる。仲間としてずっと横にいることが伽であり、伽のときに出てくるのが御伽噺。
そばにいることから語らいが起きて輪に入る。語れる/聞けるが安心してできる仲間との内で、さらに語りが開かれていく……というお話を聞いて、じゃあ今回の配信に各地から出演してくださったゲストたちやその活動、これまでに見てきた被災地域での語らいの現場にいる人たちって、「伽」だったのか!?と個人的に腑に落ちたり、など。
伽のような存在や共同体を基盤にして、語らいやその記録、表現が生まれてくる。ただ一方で、現代の暮らしってその小さなコミュニティがないことも多いよねという意識を持ちつつ、記録や表現を先に放って場を作っていく方法もあるのでは?と、瀬尾さんが丸森でつくった「おおじゃくぬけ」の朗読も試聴。
飯倉さんからは「民話は群れの文芸」と、柳田國男の言葉の引用もありました。
みんなでつくったからみんなのもの。共同でつくられていく中で落ち着く形に変わっていく。のちのち混ざっていく人も、自分の選択や手渡す相手によって形を変えていっていい。「群れの文芸」という意識で記録や表現を使っていけると風通しも良いし、群れ自体もまた増えていくよなあ、とも想像しました。

これまで土地の現場で立ち会ったりリスペクトしてきた活動や、その周辺で自分たちが試みた方法って、どこか感覚的なままに抱えていたのですが、今回研究者である飯倉さんから、それらがどう大事で、これまでの社会の事象のどこと接続してるかを考察して裏打ちしてもらえた、心強い回でもありました。
飯倉さんにはその後の長い配信の旅にも同行いただき……本当にありがとうございました!

次回のテレビノーク

次回はまだ未定。というのも、今回で3331アーツ千代田room302から配信拠点をお引越しをし、新スペースをつくりつつ配信の準備をします。
次回配信は決まり次第twitterやnoteでお知らせします。
あたらしい拠点でスタートする新年度も、どうぞよろしくお願いします!

生配信内でもお伝えした「ふつうの明日」の呼びかけでスタートしたトルコ・シリア地震のオンラインチャリティーボックスは、4月11日までの販売を延長しています。

4/9にはTwitterのスペースでもトークを予定
こちらもお見逃しなく!!


レポート:佐竹真紀子(美術作家)
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