「私、いまハイラルにいるの」
「犬か猫か鳥が飼いたいよー!もしくはswitchを買いたいよー!!」
この要求は小学生のものではない。わたくし(30代・主婦)が夫に対してひとりしきり行っていた訴え(という名の駄々こね)である。仕事で疲弊し、同居でメンタルをゴリゴリに削られ、とにかく逃避するものが欲しかった私なりの嘆願であった。
ともあれ嘆願のうち最も手軽なものが聞き届けられ、我が家にswitchがやってきた。もちろん、私の虎の子で買いましたとも。
さて、迷ったのがソフトである。オバハンくさい言い方だが、最近のゲームは奥行きがあって視界がグルグル回る。つまり、酔う。
そしてゲームから遠ざかって久しい私が、手を出しても大丈夫で、細切れに行えそうなもの…。switchには魅力的なソフトがいっぱいだ。先だって発売されたポケモン剣盾、ずっと気になっていたスプラトゥーン、ストーリーが気になるFE、ドラクエだって気になる。品薄だというリングフィットアドベンチャーも心をくすぐられる。64時代にハマりにハマったスマッシュブラザーズ、マリオやカービィといった任天堂の看板たちも捨てがたい。
「じゃあ、ゼルダの伝説はどうですか?」
ゲーマーの義弟が勧めてくれたソフトに私は面食らった。ゼルダの伝説は大好きだが、最後にプレイした時からかなりの時が過ぎてしまった。そして私はとにかくアクションが下手なことには定評がある。そもそもRPGをやり続けられるのか。
義弟は頷きながら聞いていたが、最後に微笑んで付け加えた。
「ストレス解消ならゼルダがいちばんですよ」
いちばん。その言葉に背中を押されて私は「ゼルダの伝説 BOtW」を購入した。初めてゲームを買ってもらった小学生の頃を思い出してドキドキしていた。
初めてわかったことだが、ゼルダの伝説は自由度が高い。敵と戦い、ストーリーを進めるだけでなく、木を切り倒して橋にしてみたり、キノコやリンゴを採取してみたり、火打ち石で火を起こしてみたり、泳いだり、よじ登ったり、料理をしてみたり…。
何より、広いハイラルの世界を息が切れるまで走ったり、高い空にそびえる岩によじ登ってみたり…。いや、実際に動いているのはリンクなのだが、リンクの息遣いを感じられるような気がするのだ。
ストレス解消になりますよ。
そう言った義弟の言葉がなんとなく分かる気がする。今日も私は、妻でも母でもない者としてハイラルの大地を息を切らし走っている。
追伸:ちなみに弓矢はまだ一度も敵に当たったことがない。
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