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旅の変わりに私の五感を起こしてくれる鍵を求めて #100枚で写す夏の日 を終えて

底が見えるくらいの中途半端に高いところと、物凄く早口で喋る人。観たいアニメのない静かな夜に、田舎の暗闇に突然現れる自動販売機。空虚を見つめ続けるうちの猫。

生きている中で怖いものは沢山あるけれど、その中でわたしが最も恐れてることのひとつに、五感が死んでしまうことがある。
何を見ても何をしていても心が目が味覚が触れた指先が、決して熱をおびず、ただただ途方もない時間だけが横たわり、流れていく。

それがもしかしたら「穏やかな日々」なのだと思う日もくるかもしれないし「五感が死んでいるだなんて、失礼しちゃうわ」と思う人もいるかもしれない。

それでも私は全身に鳥肌が立ち、胸が締め付けられ、息も瞬きも止まってしまうような、ふと気づけば涙がボロボロとこぼれ落ちるあの瞬間を。
思わずはははと声をあげて誰かを抱きしめたくなってしまう瞬間を。
この世の秘密に触ってしまったような、ドキドキと高鳴る胸の鼓動を。
ああ、生きていて良かったと。逆に、もう死んでしまいたいと。心が震えるあの瞬間たちの五感がフル活動している最上が、人生で最も特別なご褒美だと信じている。

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これまで、狂ったように旅を繰り返してきたのは、そんな五感が花開く瞬間を貪欲に求めていたから。
「狂った」という言葉がしっくりきすぎて、我ながら笑ってしまう。
もっと、もっとこの世界には何かあるはずだ。もっと知らない何かに触れるために。と、インドへ、ウズベキスタンへ、タイに暮らしてみたかと思えば、ひとり無計画アイスランドへ。
どんどんディープな旅へとずぶずぶハマっていき、次はよしイランへ行こう、というところでこの度世界から予想外のストップ宣言をいただいてしまった。

旅はインスタントに五感を開くための魅力的で離れがたい、まるで麻薬のような存在だ。一度知ってしまったらなかなか辞められない。もしかしたらそう考えると、こうして世界が私を「おいちょっと立ち止まって考えろよ」と止めてくれた事は、実は、自分だけに限って言えばとてもラッキーな事だったのかもしれない。


だから久々に、日本の都会で長く一箇所に留まり、大人しく暮らしている。

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そんな五感フリークな私にとって、カメラはとても大切な相棒だ。
カメラはすごい。これは世界と向き合うための、唯一無二の、何でもない日常にさえ魔法をかけてしまう可能性があるアイテムだと思う。

私は多分今後、旅に変わる自分の五感を満たしてくれるものを探さなければいけない時がくる。
「古性さんは土いじりをしたほうがいい。地球に触れて、学んで、生きているパワーをもらったほうがいい。自然から五感の扉を開く練習をするといい。都会で、誰かに食べるものも住む場所も、寄りかかる暮らしのフェーズは終わったのかもしれないね」とアドバイスをしてくれたのは私の恩師で、そんな大変な生活をわざわざするのもいいな、と考えているところなのだけれど。まだ勇気がでないな。

とりあえず、例えば私がこの先また世界を飛び回って暮らすとしても、田舎で地球と向き合って暮らすとしても。仕事で使わなくなったとしても、きっとずっとカメラは側に置いておくのだと思う。大切な相棒だ。

今私の手元にカメラがなければ。
とっくのとうに私の五感たちは愛想を尽かし、どこか冒険に行ってしまっていた事だろう。


100枚写す写真

先日企画した1日100枚写すこと、を目標に開催したイベント「#100枚で写す夏の日」も実はそんな経緯から。

私の運営しているオンラインコミュニティ主催で開催し、「みんなで夏を写したら楽しそうだよね」という名目のもとたくさんの人が参加してくれた。だけれど実はただ、わたしが五感を開く練習をしたかっただけなのかもしれない。(ちなみに当日の様子はまた、うちのコミュニティの敏腕ライターが書いてくれるはずなので、今回はとことん自分のことを話させてもらっている)

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カメラはすごい。「撮るぞ」と決めた瞬間、普段見過ごしてしまうような小さな花や木漏れ日、太陽を受けて光る水や、食べかけのパン。そういったものが、突然、五感を開く鍵に早変わりする。
多分旅がくれる鍵とはまた違う。小さくて、気をつけないとすぐ手からすり抜けていってしまうような、そんな儚いもの。
でもこれは確実に、私が欲しいあの魂が震える瞬間に通じている扉で。
だからこそ、定期的に手にしたいし、大事に磨いておきたいのだ。

そんなエゴいっぱいで開催した「#100枚で写す夏の日」は、本当に久々に、全神経を目の前の世界のことと、あらるゆ五感に集中させてくれた。

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逗子の葉山を歩いた。気温は35度。
滴ってくる汗と戦いながら、繰り返し、世界にシャッターを切り続ける。
黙々と慎重に、時にはファインダーすら覗かずに乱暴に。

そうすると少しずつ世界と自分の間にある境目がなくなって、溶け合って、心地よくなってくる。
良い写真かそうじゃないかは正直どうでもいい。
五感を研ぎ澄まして世界と繋がること。
多分わたしとカメラの付き合いで一番大事なのはそのことだけなのだと思う。

胸が心地よく高まる。
夏の熱い日差しに、アドレナリンが止まらなくなる。
もっと、もっと世界と繋がりたい。
だけれどやはり日常がくれる鍵はここまでで、きっとこの先の鍵はまた、別の場所にあるのだと思う。

ああ、私はやっぱり旅がしたいな。
誰も知っている人がいないところがいい。
食べたことのないもの、見た事もないものがあるところがいい。
カメラを連れて、場所も決めず、猫のように風のように、
見た事もないものに心を震わせたい。五感を研ぎ澄ませて生きていたい。
やっぱりまだ、私に土と対話するのんびりライフははやいのかもしれない。


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本当に、久々にいろんな自分に向き合えた一日になりました。
企画にのっかってくれた全ての方にありがとうございました。
また100枚撮りにいこう。
ではでは、またね。

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- Thankyou : #100枚で写す夏の日
- 企画: .colony
- 共催: #旅と写真と文章と / Photolilabo


















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古性のち | Noci Kosho
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