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音読 『感受体のおどり』 第18番

 第18番を音読します。

 記憶の欠けた生の原古に,親たちの死滅やわが身のやりとりがおわっていた霧根きりねには, (以下は略)

単行本『感受体のおどり』024ページより

第18番: おどり・後期(霧根きりね

 花形の踊り手、霧根の自分語り。
直接に知り合う前から舞台を見ている「私」に、さりげなく語られる
 「この人生は、本来の自分にふさわしいものではない。」
という気持ち。

 黒田さんの文体によって立ちあらわれる、霧根という人物の特別さ。
第18番は1ページ分しかないのに、どのセンテンスも引用したくなります。音読するにも、重々しさがきもち加わるような。朗読のプロなら、俳優さんの朗読なら、もっとクッキリするだろうなあと。おおげさかな?

 「原古」という言葉が上記の引用に出ています。私は「げんこ」と読み、なんとなくイメージできるのでそのまま通り過ぎそうでしたが、辞書などを調べてもどこにも出てきません。
 英語だと「origin」みたいな? 「起源・根源・始まり」といった意味合いかと思います。
 

 丁寧に腑分けするように表現している、という印象はあるものの、うまく理解できていないと思いながら読んでいるくだり。

霧根きりねは過去のじぶんを,すなわちは未来の自分を,げんにあった,ある,あろうものでなかったかもしれない,なくてもかまわないものと受けとめることができた.

本文より


 読みにくい漢字 :
  否み(いなみ)  緊め(しめ)  凛凛しい(りりしい)
「緊め」は、最初は「ひきしめ」と勝手に読んでいました。



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