ののぱりこ

いしいひさいちさんの漫画「ののちゃん」で言うと、ののちゃんの食い意地、まつ子さんのずぼら、しげさんの暴力性。それらを適度にミックスした上に、少しは本も読む、という人間です。

ののぱりこ

いしいひさいちさんの漫画「ののちゃん」で言うと、ののちゃんの食い意地、まつ子さんのずぼら、しげさんの暴力性。それらを適度にミックスした上に、少しは本も読む、という人間です。

マガジン

  • 少しずつ音読しましょう、『感受体のおどり』

    黒田夏子・著『感受体のおどり』(文藝春秋)を開くのは三度目。人に聞かせるような朗読は能力的・技術的に無理ですが、声に出して読みたい。そういうわけで、勝手に個人的に音読して録音しています。『感受体のおどり』を読み終えた方も、積読(つんどく)してる方も、一度も開いたことがない方も、勝手に音読して、読み進めてみませんか。

最近の記事

音読 『感受体のおどり』 第12番

第12番を音読します。 第12番: おどり・中期から後期(日乗・月白・朝荒・昼植・退照児)  師匠の月白に関することへの、尽きることのない「知りたさ」。いくつもの理由を数えたてて、首都のけいこ場へ通うことで飛び込む「群神」たちの世界。  急死したという、おどりの創流者の名は「日乗」です。はじめは、「祈り」と同じアクセントで「ひ」を低く、「のり」を高く読んでいたのですが、後に出てくる、日乗と同じく格が上の人たちの名が「火守木」「水馴木」で、もしもこれらの名前も一音目を低く

    • 音読 『感受体のおどり』 第11番

       第11番を音読します。 第11番: 風景(私)  上の小見出しは、私が自分でわかりやすいように内容で分類したタイトルです。「おどり」「物書き」「仕事先」などと分類し、カッコ内に登場する人物名を添えています。第11番は分類しづらくて、とりあえず「風景」としました。  海辺の町で育った主人公が、風景とじゃれるように好きな道を選んでは、浜や河口まで歩いた情景と心持ちが描かれています。  海辺の町に私は住んだことがなくて、あこがれ半ばで読みました。感情をこめるというよりは、サ

      • 音読 『感受体のおどり』 第10番

         第10番を音読します。 第10番: おどり・中期(私・月白)  積もるばかりの恋心をまぎらして歩くいつもの風景に、占いのごとくに思いを託して一喜一憂する様子。  上のふたつのフレーズは、ひとり同じ道を帰る、別々の日の描写です。うまく読めなくて何度も音読してみたら、これって同じこと言っているよな? と気がつきました。  一見くどいようにも見えますが、恋のまわりをグルグル回って、日々ああでもないこうでもないといろんな角度から眺めている、という気持ちを思い出すような感じがし

        • 音読 『感受体のおどり』 第9番

           第9番を音読します。 第9番: 物書き(私・青折)  初登場の青折と「私」との関係は、すでに終わりの予感があります。ここで「私」が呼びかけている青折は、目の前にいるその人ではなく、「あのころ」のその人だからです。    ある程度長い時間を共に生きた相手がいる方なら、こうやって「あのころ」の相手に遠く小さく呼びかけたくなった時期や、その時の腹の底にかすかに響く哀しみの残響は、身に覚えがあるかもしれません。  ・・と書くと同時に、自分自身も相手からそう思われていた可能性を思

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        • 少しずつ音読しましょう、『感受体のおどり』
          12本

        記事

          音読 『感受体のおどり』 第8番

           第8番を音読します。 第8番: 物書き(走井)  いきなり出てきた、「生後千にちの走井」です。他愛もない、幼い頃の思い出語りは、鏡の不思議さ。本当に、私も同じように試してみたよなーと思い出します。  これ以降に出てくる走井は、関わった人間が予期するものを超える、歩みと、言動と、まっすぐな在り方で、そこに生き続けるでしょう。  漢字・・ 老獪(ろうかい)

          音読 『感受体のおどり』 第8番

          句読点のこと

           黒田夏子さんの小説の特徴のひとつに、横書きであることが挙げられます。私が全然意識していなかったのは、句読点のことです。  私は、今そうしているように、PCで文章を書くことが多いですが、句読点については入力して最初に候補に出る「、」と「。」を無意識に採用しています。また、紙に筆記具で書くときも、「、」と「。」の形の句読点を書いています。  黒田さんの小説では、カンマ「,」とピリオド「.」が使われています。ピリオドはわかっていたのですが、カンマは気がついていませんでした。

          句読点のこと

          音読 『感受体のおどり』 第7番

          第7番を音読します。 第7番: 物書き(私) 手さぐり  ここまでは、主人公の人生のいくつかの場面が描かれていましたが、この第7番では創作の原点とも言える、ふたつの手さぐりの始まりが描写されています。  創作をする方にとっては、この主人公のように自分一人で「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤する習慣は親しいものかもしれません。  それとは別に、毎日の生活の中で、自分の触覚に響いてきたことを何とかつかまえたいのにつかまえきれないという「愁い」。  私は、このふたつ

          音読 『感受体のおどり』 第7番

          音読 『感受体のおどり』 第6番

          第6番を音読します。 第6番: がっこう(同級生たち・鳥たち・私)  学校の行事で、皆と並んで町を移動している時に目にしてしまった、売り物の鳥たちのつらい現状。  猛禽 もうきん   小禽 しょうきん 「猛禽」とはよく耳にするのですが、「小禽」という言葉はあまりなじみがないです。 『abさんご』芥川賞受賞記念会見で、黒田夏子さんが という内容をお話ししていました。受賞作『abさんご』の1ページ目にも「小禽」という言葉が使われているのです。  調べてみると、伊藤若冲

          音読 『感受体のおどり』 第6番

          黒田夏子さんの本との出会い

           黒田夏子さんが『abさんご』で第148回芥川賞を受賞されたのは、テレビや新聞で報道されていたので、もちろん知っていました。  でも、自分はどちらかというと小説は読まない方なので、積極的に手に取るということはありませんでした。  たまたま古本屋で見つけた『abさんご』、2013.1.30 第3刷発行。 平仮名が多くて横書きで、風変わりとは思いましたが、自分にはしっくりくるものでした。古本屋の棚の前で、そのことにちょっと驚きながら文字を追っていたおぼえがあります。それで購入し

          黒田夏子さんの本との出会い

          音読 『感受体のおどり』 第5番

          第5番を音読します。 第5番: おどり・初期(嵐犬・針犬・私・牛)  のんびりとした明るい午後。なんとなく義務で通っている「おどり」のおけいこをさぼり、友達と遊びほうける道中のエピソード、小さないらだち。  私は動物が好きなので、土手の道に牛がいる、というだけでワクワクして読んでしまいます。単純です。でも確かに、牛に蹴られるかも・・とは心配。農耕用の、ごつい牛でしょうか。  おどりを一緒に習っている、学校友だち三人の名前は    嵐犬 針犬 毬犬 です。「〇〇ーぬ」と

          音読 『感受体のおどり』 第5番

          音読 『感受体のおどり』 第4番

          第4番を音読します。 第4番: おどり・中期(月白・熟先・渡先・曇先・私)  風変わりな名前の登場人物が、続々と出てきます。名前には全ページ、ルビが振られています。 同級生:毬犬、針犬、嵐犬 おどりの先輩たち:熟先、渡先、曇先 など  登場人物の名前については、黒田さんは昔からかなりこだわりがあると、インタビューでお話ししています。  そのこだわりは、私には全部わかるはずもありませんが、先輩には「先」がついてるなーと思ったり、幼い頃の友だちの名に「犬」がついていると、犬こ

          音読 『感受体のおどり』 第4番

          朗読ではなく音読なのは

           『感受体のおどり』を二度目に読んでいる時、ひとつひとつの章(この小説では「第〇〇番」という区切りになっています)が短めで、ふと声に出して読みたくなる箇所がたまに出てきました。平仮名が多く、文章の途中の読点(,)が少ないので、慣れると、その流れを口にしたくなるのです。  でも自分で「朗読」ができるとは思えなくて、「誰か俳優さんが『感受体のおどり』を朗読したらいいのにな、でも長くて無理だよなー」なんて思う程度でした。  それでもこっそり(?)試しに読んで、録音したのがスマホに

          朗読ではなく音読なのは

          音読 『感受体のおどり』 第3番

          第3番を音読します。 第3番: おどり・中期(練緒・月白・私)  後には「私」の踊りのライバルとして存在感が増す「練緒」の、入門間もない頃のエピソード。  黒田夏子さんの小説の特徴  ・ひらがなの多用  ・読点(,)が少ない  ・会話が鍵かっこ(「」)に入っていない これにより、文章のセンテンスが長く、どこが切れ目なのか、わかりにくいです。ということが、声に出して読んでみるとよくわかります。たとえば、 いくえに ? もつ ? つまれて ? いくえにもつ ? つまれてい

          音読 『感受体のおどり』 第3番

          音読 『感受体のおどり』 第2番

           第2番を音読します。 第2番: おどり・中期から後期(春潮・私・月白)  これから舞台に出ようとする二人の衣装の描写・・  知識がある方にはすぐに「あっ、あれだね」と、日本舞踊の演目がわかると思いますが、私は日本舞踊にも歌舞伎にもまったく縁がなくてわかりません。これかな? というのが以下の映像です。  おめでたい演目のようです。体幹がしっかりしていないと踊れないなあ。というのが感想です。  猩々(しょうじょう)というのは伝説上の怪物(あるいは聖獣)で、酒好きの、妖精

          音読 『感受体のおどり』 第2番

          参考にする、手元にある辞書など

           ネット上で検索すれば、漢字の読みでもことばの意味でも答えは出てきますが、久しぶりに紙の辞書も使用してみるかと、本棚を探しました。  手元にあるのは以下の通り。古い。 ・新明解国語辞典 第二版 (三省堂) ・新漢和辞典 三訂版 (大修館書店) ・古語辞典 新版 (旺文社)  新明解と古語は、自分が高校生の時のもので、古語辞典はあまり使っていないのでけっこうきれい(捨てていなかったのが奇跡)。  漢和はうちの相方の学生時代のものなので、もっとうんと古い。 辞書は、改訂を重ね

          参考にする、手元にある辞書など

          本の読み方にはいろいろありますが

           このnoteでは、『abさんご』で第148回芥川賞を受賞された黒田夏子さんの長編小説『感受体のおどり 350番』を、「勝手に音読」してゆきます。  と言っても、私が声に出して読む音源を公開する予定は全然ありません。 一番簡単に理由を言うと、「気楽にやりたいから」かな?  詳しくは、「音読」する合間に少しずつ書いてゆけたらいいなと考えています。  上の紹介は、単行本のもの。現在は『abさんご』と一冊になった文庫本があるそうです。  『感受体のおどり』は、版元の文藝春秋社の

          本の読み方にはいろいろありますが