vol.5 黄色
「ウミトカモメ」のデータを入稿してホッと一息ついた。私の仕事はここでひと段落。
テキスタイルプリントにはカラーバリエーションがあるといい。肌や髪の色、瞳の色のタイプに合わせて少なくとも二種類は欲しい。けれど今回は予算の関係もあって、服地の色展開は次の機会を待つことにしてハンカチを二種類作ることに決めた。
「無理せずに、ゆっくり焦らずいきましょう」
それが二人の合言葉。
「もう一色作るならイエローベースがいいね」
近い将来に作る服地のことも考えてハンカチの色を選ぶ。茶色い瞳のあの人や、ウエーブのかかった明るい髪色の彼女の姿が目に浮かぶ。不特定多数の誰かのためではなく、いつも身近な誰かを想う。
黄色は春の色。
冬から春になるとき最初に咲く花は黄色。桃色でもなく桜色でもない。マンサクやロウバイ、タンポポ、ハハコグサ、短い間に驚くほど膨らんでいくミモザの花、一面の菜の花畑。甘さを隠し持った酸っぱい柑橘、ミツバチの集める蜂蜜の色。
黄色は夏の色。
ヒマワリの色で、グラジオーラスの色。眩しい太陽の色。そして秋には紅葉した黄色の葉。シラカバ、ミズナラ、イチョウが一気に存在感を増す。
黄色で春から秋まで、ぐるりと一年の半分以上をイメージできる。
黄昏時の海みたいね。
菜の花畑の上を飛んでいるみたいね。
カモメの見ている景色が豊かになった。
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