賢帝の覚え書き。
マルクス・アウレリウスの自省録をやっと読んだ。
岩波文庫の神谷美恵子訳のもの。
人に読まれる事を想定せず、自分のために書き留めた哲学的思索をまとめたものなので、一貫した構成があるわけでもなく、重複したことも述べられている。
まあ、プライベートな記録を大々的に発表されてしまい、本人は困惑しているかもしれないが(笑)
ハドリアヌス帝に寵愛され、若くから才覚をあらわしつつも、禁欲的で清廉だったらしい。出てくるエピソードがことごとく、ぐうの音も出ないほどの聖人である。
哲人皇帝の治世は、よく国を治めつつも戦争や疫病など苦難も多かったようだ。
国境は脅かされるし、疫病は流行るし大変だったらしい。
本人も戦場で亡くなっている。
思想はストア派哲学(後期)に基づいており、禁欲的、理性的であるのは自明のところ。セネカと同じように人生は短いと言い、死を恐れず自然に受け止めよ、という主張。彼の死生観、生の儚さへの想いは、多くの子供を亡くしたことも関係あるかもしれない。
それぞれは散文的に書かれていて連続しているわけではないのに、根底には諸行無常という感じが漂っている。
時には、強く自分を戒める。
セネカと同様に、そこには現代にも通じるものがたくさんある。
いくつか引用する。
SNSなんて、まさに自分に関係ない人たちの事を覗き見て気にしているわけで。
ローマから人類やってること同じだな。
うまくいかなくてもやり直したらいいよ。
死は誰にでも平等に訪れる。
ものごとの受け取り方や、捉え方、考え方次第で、苦しみは和らぐかもしれない。
ちなみに私は全部出来ていない。
耳が痛い。
厳しく言い放つのではなく、文末に「勇気を出せ」とあるのが良い。
これ、大事。
他人のふり見て我がふりなおせ。
無敵は力強くていいな。
などなど。
生の儚さと自分への戒めの言葉を繰り返し、まさにストイックという感じ。
道徳的というか、善くあることへの強い想いというか意思が伺える。
人にやさしく、自分にきびしく。
それを、貴族であって皇帝となっても貫いたらしいのは、素直にすごいと思う。
こんな思索を巡らせながら、戦の前線にいるんだからね。