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vest of 尋亀 2019

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SSGに投稿したものを中心に、2019年に書いたショートショートを加筆修正しまとめてみました。
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記事一覧

vest of 尋亀 2019(巣々木尋亀作品集 Ⅰ )について

 ここに集めた14本のショートショートは、ショートショートを書き始めて3年目の2019年…

世界の始まり

 たまたま覗いた骨董市で見つけた、その小さなコップ程の小瓶に浮かんだ地球儀は見れば見るほ…

ポイント人間(シリーズ人間より)

 私の人間ポイントは0てポイント。健康で文化的な最低限度の生活しか保証されていない。昔の…

焼鳥人間 (シリーズ人間より)

「俺だって昔はよう。」 間口の狭い、小さなカウンターだけの焼き鳥屋で、トレンチコートの男…

宇宙人間(シリーズ人間より)

 スペースコロニーの無重力サウナにプカプカと浮かんだマークとチーハは今日もよもやま話に余…

インスタント人間(の正しい作り方)シリーズ人間より

袋から乾燥人間と人の素の袋を取り出します。 耐熱容器に乾燥人間を入れ、40℃のお湯を1リット…

白黒人間

ミスターホワイトはそ名の通り真っ白い肌をしており、ミスブラックは反対に真っ黒い肌をしていた。肌の色だけではなく二人は性格も嗜好も考え方も、凡そありとあらゆる面において正反対であった。 最初はお互い何一つとして分かり合えない二人であったが、ある時偶然に互いがお互いの欠陥を補い合うことを発見した。 それ以来二人は意気投合し、程なくして結婚した。 やがて二人に子供が生まれた。 子供は双子で、一人は黒っぽい肌の男の子で、もう一人は白っぽい肌の女の子であった。 やがて二人は成長し、それ

夜人間

 夜人間どもがやって来て、街頭でスピーチを始めた。 「光に騙されてはいけない。」  けれど…

無人間(シリーズ人間より)

無人駅のホームに無人特急が滑り込むと、合成音声の7ヶ国語同時アナウンスが列車の到着を告げ…

シン吾輩は猫である(シン・シリーズ0)

 キャットフードの缶詰を自分で開けることが出来るようになれば、もうそれは猫とはよべず、最…

シン・ハチ公物語

 私ご覧の通り犬でございます。名前はハチと申します。  世間様からは忠犬なんてもてはやさ…

シン・猿の惑星

 光速の100倍のスピードで地球に飛来したゴルフボール風の探査機は、地球を100周して収…

シン・サンタクロース

 サンタクロースの乗った三輪スクーターが信号待ちをしている。そんなことを言うと、それはサ…

壁画

 コンクリートの壁や地下鉄の車体にカラースプレーで描かれた、一見するとありふれたあるストリートアーティストの作品が、一部の批評家のあいだで話題になり始めたのは今世紀初頭のことであった。  その作品が最初に発見されたのはニューヨークのウォール街の一角であったといわれているが、正確な記録は残っていない。その作品の片隅にはいつも小さくxとサインされていることから、いつの間にかそのアーティストはエックスと呼ばれるようになった。しかしそれがアルファベットのxなのか単なるバツ印なのか、ま