もうずっと過去に生きるのは
分かってるんだけどな
分かっているのに
多分どの季節を切り取っても
もうずっとずっと
秋の空を眺める様に
ひっそりと過去を生きている
ぼんやりと、ただぼんやりと
その日暮らしの音で耳を塞いでは
思い浮かんだ言葉すら
口にする前にすぐに忘れてしまうのに
伝えたい事はいつだって
溜息混じりのタバコの煙と宙に舞う
アイドリングの音と
救急車のサイレンが
蒸し暑く街頭照らすこの夜に
鳴り響いて鳴り響いて
五月蝿いから
あの日寄り添ってさすってくれた歌を
後生大事に今でもずっと抱き抱えて
振り返って振り返って
それでも無理やりに手を引かれ
どこに行くかも分からずに
どこかへ連れてかれる様なこの日々で
分かってるんだけど
分かっていてもさ
寄り添ってくれた優しさが
急に居なくなってしまった
そんなあの日が、今でもたまに怖いんだ
いつもいつも
刻みこまれて刷り込まれて
いつだって寸出のところで
逃げ出して放り出してしまうのは
傷が付いてすり減って
置き去りにされる夜が
きっとまだ痛むから
いつの間にやら
依存する前に我先に
痛いの痛いの飛んでいけ
願う様に逃げ出しては放り出す
そんな事を繰り返して
今日もマンションの踊り場で鳴り響く
泣き叫ぶ子供の声が悲しいから
あの日寄り添ってさすってくれた歌を
後生大事に今でも抱き抱えて
ぼんやりと、ただぼんやりと
その日暮らしの音で今も耳を塞いでる
多分どの季節を切り取っても
もうずっとずっと
二度と同じ季節は巡ってこないと
分かっていながら
それでも過去に生きてしまうのは
分かってるんだけど
分かり切っているはずなのに
それでも
ポツリポツリと押さえた鍵盤から
耳をすませたピアノの音は
誰も居ない薄明かりのあの部屋で
滴り落ちる水滴みたいな寂しさで
そんな音が今でもたまに
ふと思い出して
ぐちゃぐちゃになった感情を
そっと優しく、大丈夫だよって
きっとさすってくれるから
そうして
思い浮かぶ感情はいつだって
明日の朝になったら
もうじき忘れてしまうから
もうずっとずっと
あの日の秋の空を眺める様に
いつだって過去に生きている
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