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14.哲学の翻訳者

私と哲学

私は常に頭の中が言葉による思考でいっぱいになるタイプ。
子どもの頃から、これを自動的に吐き出す機械が欲しいなーと思っていた
今はPCがあれば比較的スムーズに吐き出せるけど、
そこそこ早い私のタイピングでもやっぱり思考のスピードには敵わない…
話している時だと思考が先に進み過ぎて言動を追い越してしまい、会話をやや飛ばして伝わらなくしてしまうこともたまにある…
(本当は起きている間の思考を全部吐き出したいw)
録音だと正しく聞き取れるかに気を取られて思考が崩れるし、
いつでもできないし、何かと不便

この、日々溢れ出てくる思考の中でときどき、哲学的だなと思うこともある
でもこれって概念的なもので、私のような凡人が考えるそれっぽいことは
太古の昔に誰かがもう考え抜いて既にまとめられている

授業としての哲学(専攻ではない)って概論みたいな感じで
「人間は考える葦である」は誰が言った言葉だとか、
ニーチェやルソーはいつの時代を生きたのかとか、
そういうことが肝で、思想に深く触れる機会は少なかったように思う

とは言え、
気になる格言があると調べてみたり、
哲学者の著書を図書館で借りてみたりしてみたものの、
当時クソガキだった私は、
どこか遠い世界の話のように感じて、せっかく興味を持ったものの、
ちっとも私の糧にすることができなかった

大森さんの中身

実質、私は大森さんのことをよく知らない
曲と表現力に壊されて、彼のポテンシャルに慄いているけれど、
人となりはTVで見かけたことを知っているだけ

イメージとしては、めちゃくちゃ読書家なんだと思っていたけれど
実は活字が読めなくて、子ども向けの哲学書だけは読めた、という話を聞いて
何となく腑に落ちたところがある

あの溢れてしまいそうな感受性と一貫性、
年齢と釣り合わないと思っていたけれど、彼のベースには哲学があるんだ

07.ミセスのビジュアルに思うこと」で少し書いたけれど、
彼の紡ぎ出すことばの中に、容姿の良し悪しにはっきりと触れる表現は見当たらない
(聴き始めて日が浅いので見落としがあったらごめんなさい…いや、StaRtは容姿に入るかもだけど、アボイドノートにも「美」が入るけど、趣旨が違うと思っています)
2016年時点、10代で既にこれです…↓

「私の容姿はどう?」とかいいから
着飾りの形じゃなく ほら

愛情と矛先(作詞:大森元貴)より

同様に、絶対に触れない禁忌エリアがあるように思う
リリックには負のことばは出てくるし、投げやりなことばも出てくる
でも、例えばだけど、そしてものすごく抽象的だけれど、
運命的に変えようがない・抗えない環境的なこと、
生まれ育ちや身体の差に関すること、
お金に関すること(ワードとしては出てくるが)、権力の話、みたいな
特定の誰かが自分を不幸だったり不公平だったりと感じてしまうことや、
何かができないことで傷つく可能性のあることなどには
ことばとして一切触れずに表現している(はず)

これって当たり前に感じるけど、実はそうじゃない
案外、「君は美しい」とか「男なら」とか「背が高い」とか「金で買える」とか「父」「母」とか、
何気なく、結構出てくるでしょ?

何この深い愛。
「完璧な思い」の答え(参考:11.「完璧な思い」って何だろうね)じゃなくて、
こっちがアガペーなのかもね


実は伝道師?

正確には伝道師という表現は正しくないんだけど
ちょっと私の語彙力ではどう表していいのかわかんないや…

哲学者が考え抜いて残した言葉って、
商業音楽にとても似ていると思う
もちろん演劇や映画や小説にも通じる

伝えたいことがあって、それをそのまま連ねるのではなく
受取り手の立場に置き換えて、例えて、わかりやすい表現に変えていく
たくさんの伝えたいことを、ぎゅっと詰め込む。
音楽もきっと同じ

彼は恐らくシナリオに沿って音楽活動をしている
フェーズを区切って、あらゆる表現を凝らしていく
彼が本当に伝えたいことは、薄っぺらくなって平和ボケしてきた日本人に
生きるための哲学を与えて、個々が強くたくましく生きるための知恵なのではないか

商業音楽は大衆向けなので
私の主語も大きくしてしまったけれど
そして何だか大それたことみたいな書き方をしてしまったけれど
彼が哲学を通した深い思考を広く伝えて、みんなを底上げしようとしているみたいな、
中高生や若い子たちが社会に毒される前にそれぞれが強くなって欲しいと願っているみたいな、
そう考えるとしっくりこない?

たとえば、自分だけがルッキズムから抜け出したとしても
社会がそれに侵されていれば、いばらの中に裸でいるようなもので
自分だけが傷ついてしまう
皆が一斉にそのトゲを抜かなければ、社会が変わらければ一人が変わることも難しい

フェーズの差

哲学的な曲というと恐らく「アウフヘーベン」を思い浮かべる人が多いと思う
どうもタイトルの聞きなれないワードの方に意識がいきがちだけれど
アウフヘーベン自体は、社会生活を送るうえで当たり前に行われていること

そのストーリーは、集団生活を送る若者にありがちで
大森さんがこの曲を作った年齢を考えると等身大に見えるかもしれない
でも実際は日本社会全体にもぴったり当てはまる
恐らくそれを、彼なりにかみ砕いたはず
(あの年齢で一度昇華して下ろしてくるとか賞賛の意味で本当にあり得ない…)

でもなかなかそのままだとやっぱり本質は伝わりにくい
だからフェーズ2はより浸透力を上げて、表現力を上げて、
もっとずっと、より日常生活に沿ったストーリーを展開しているように思う

例えばだけど、
「アンラブレス」は「アウフヘーベン」をさらに細かくして大事なところだけを抜き出して、ターゲットも絞ったものに感じる
(それだけじゃないけど)
「アウフヘーベン」の考察は難しかったり個々で読み解き方が変わったりしそうだけど、
「アンラブレス」はきっとそのまま受け取れるよね

いやマジで、「アンラブレス」に込められた愛が深いよ…

もしかしたら彼は「Mrs. GREEN APPLE」を通して、哲学の翻訳者の役割を担おうとしているんじゃないのかな
ほかに表現したいことは、別のかたちをとって。




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